講談社文庫

□2016年02月号目次

赤ヘル軍団が赤川次郎を回し読み

──

「本がない生活は考えられない」というほどの読書好きの江夏さんですが、本を読むのが習慣になったのはいつごろからですか?

江夏

読書が趣味になったのは、三十近くになってからやね。子どものころからっていうわけではなかった。漫画とか野球関連の本は読んでいたんだけど、いまのような小説を手放せないって感覚ではなかったですね。

──

三十近くといったら、広島に移籍したあたりですか?(註・江夏氏は阪神、南海を経て、三十歳を迎える年の一九七八年から広島に移籍)

江夏

うん。それまでも、ちょこちょこっと、好きな小説を選んで読むっちゅうことはあったよ。でも、読書が習慣づいていたわけではなかったよね。
意識的に本を読むようになったきっかけは、TVドラマ。僕がプロ入りした(昭和)四十二(一九六七)年ごろに、NET、いまのテレビ朝日で『新選組血風録』の再放送があったんですよ。で、しばらくしたら、同じNETで『燃えよ剣』も放送された。これがまあ、おもしろくって。聞けば、どちらも司馬遼太郎さんの原作だというので、それじゃあ読んでみなきゃと。夢中になって読んだね。新選組が好きになったのも、このときからだったよね。

──

阪神時代のことですね。

江夏

そうだね。でも、これで本を読む習慣がついたというわけではないんよね。作品の内容には感動したし、共感もしたけれど、ほかの本にも手を伸ばしてみようとは思わなかった。当時、タイガースのファンだという作家の方たちに、幾人も会っていたのかもしれない。でも、正直言って、誰が誰だかわかっていなかったし、いまでは記憶も定かではないんだよね。

続きはIN★POCKET 2016年02月号をご覧ください

▲ページトップへ

渋谷からわずか二駅ながらも下町情緒が色濃く残る、世田谷区「三軒茶屋」のプラネタリウム兼バーを舞台にした群像ドラマ『三軒茶屋星座館』が、ついに文庫化される(第一巻は発売中、第二巻は三月十五日発売)。単行本刊行時、第一巻はTSUTAYA三軒茶屋店で文芸書ランキング五週連続一位、文教堂三軒茶屋店では十週連続第一位の快挙を達成した。柴崎竜人の名を一躍世に知らしめた本シリーズは、どのような発想から始まり、その後大きく花開いていくことになったのか?

──

三軒茶屋駅裏の「三角州」と呼ばれる繁華街にある、おんぼろ雑居ビルの七階にあるプラネタリウム兼バーが、「三軒茶屋星座館」です。冬のある日、金髪の店主・大坪和真(おおつぼかずま)のもとに、十年ぶりの再会となる弟の創馬(そうま)がやってきます。まるで別人のようにマッチョな体型となって現れた彼は、八歳になる娘・月子(つきこ)の手を引いていた。「今日から、月子のもうひとりのお父さんだ」。弟のゴリ押しで、親子三人は奇妙な同居生活をスタートさせます。胸躍らずにはいられない物語の導入部なんですが……そもそもこの物語の出発点は?

柴崎

「三軒茶屋の物語を書きたい」、ですね。二十年以上住んでいる大好きな街だし、この街の良さを伝えたいなあと前から思っていたんです。もうひとつあったのは、「ギリシア神話の面白さを伝えたい」。星座の物語ってほぼギリシア神話なんですが、みんな自分の星座の名前は知っていても、その星座の物語は知らないんですよ。知らないなんて絶対もったいない。自分が好きな二つのものを合わせた物語を作ることで、それを伝えられたらなと思ったんです。

──

「三軒茶屋」と「星座の物語=ギリシア神話」を合体させた結果が、『三軒茶屋星座館』。納得です。まさか実在するんですか?

柴崎

あったらいいな、という僕の願望です。三角州にある「三元ビル」という雑居ビルが一応、モデルですね。そのビルの中に馴染みのカフェバーがあるんですが、「ここの最上階がプラネタリウムだったらどうだろう?」と。最近、三軒茶屋って、オシャレな街みたいに言われがちじゃないですか。だけど実際にあの街が好きで、あの街でよく飲んでいるような人たちって、オシャレとはほど遠い気がしていて。特に三角州のあたりは、ジメジメしていて、日が当たらなくて……。

続きはIN★POCKET 2016年02月号をご覧ください

▲ページトップへ