□2014年9月号目次
伍子胥の運命を変えた出来事 11
なぜ伍子胥は祖国の楚を去り、中原(ちゅうげん)諸国を流離(さすら)うことになったのか? 文庫版新刊の第三巻を前にして起きた"これまでの事件簿"をご覧ください。
【第一巻より】
(1)運命の女(ひと)との出会い
加冠の儀(成人を祝う儀式)を終えた伍子胥は、答礼のために父・伍 奢(ごしゃ)とともに諸家をめぐった。子胥はそのうちの一軒である尹礼( いんれい)家で、たまたまひとりの娘を見かける。光を放たんばかりの美しさに「光源のような女(ひと)だ」と感じた彼は、尹礼に娘との結婚を申し込む。 しかしその場では快諾されたものの、数日後に破談してしまう。その後、艱 難辛苦(かんなんしんく)に見舞われる若き伍子胥だったが、彼女の面影が胸の裡(うち)から消え去ることはなかった。そんな彼にとって、あの日の邂逅(かいこう)は"運命の女"との一瞬の出会いであった。
(2)津(みなと)で起きた費無極(ひむきょく)との悶着(もんちゃく)
兄・伍尚(ごしょう)の政(まつりごと)を補佐するため、江水(長江)の水運を利用して棠とうへ向かった伍子胥。だが、船路で立ち寄った津で、平王(へいおう)の佞臣(ねいしん)・費無極に乗ってきた船をとりあげられてしまう。その横暴な振る舞いに憤った子胥は、費無極を面罵する。怒りにかられた費無極は配下に命じて子胥を捕獲しようとするが、子胥は大音声で「寄るな」と一喝。そのすさまじい語気に恐れをなした費無極一行は為す術なく、引き下がらざるをえなかった。しかし、これが費無極の恨みを買い、伍家に災いをもたらす遠因ともなったのだった。
(3)行き倒れていた兵法家・孫武(そんぶ)との出会い
伍子胥は自らが開催を提案した武術大会により、異才の人材を得ることになる。この大会期間中に出会ったもうひとりの異才が、諸国遊学中の兵法家・孫武だった。子胥は棠の邑近くの津で行き倒れになっている孫武を偶然見つけ、自宅に連れ帰って介抱する。生涯を通じて付き合いを深める孫武ではあるが、このときの子胥には孫武のことばは誇大妄想に聞こえ、彼を単なる夢想家にしか思えなかった。
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切なくて、笑えるー『恋愛小説』文庫化
椰月美智子が描いたシビレル恋物語
あなたにとっての「ベスト恋愛小説」はなんだろうか。
田辺聖子さんの『言い寄る』三部作?
唯川恵さんの『肩ごしの恋人』? 山本文緒さんの『恋愛中毒』?
江國香織さんの『冷静と情熱のあいだ』? 川上弘美さんの『センセイの鞄』?
いいえ私は山田詠美さんの『ベッドタイムアイズ』だとか、
マルグリット・デュラスの『愛人 ラマン』という人もいれば、
レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』の
あのハードボイルドな恋に痺しびれる人もいるだろう。
有川浩さんの「図書館戦争シリーズ」がベスト恋愛小説という人も、
佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』こそ最高の恋愛小説だ! という人も、
舞城王太郎さんの『好き好き大好き超愛してる。』の恋がベストワンという人も、
渡辺淳一さんの『失楽園』や
ウラジミール・ナボコフの世界こそが本当の恋だという人も──、
そう、人の数だけ、その人が体験した、感じた数だけ、人生に「恋愛」はある。
だからこそ、「恋愛小説は人生小説」ともいえるのだ。
そんな中で、まっすぐに「恋愛小説」と題した恋愛小説、
それが、椰月美智子さんの『恋愛小説』だ。
『しずかな日々』『るり姉』『その青の、その先の、』など、
子どもの心、
大人になりかけの子どもたちの心、
そして子どものまわりにいる大人の心の機微を描き続けてきた
椰月さんだからこそ描けた、「一生に一度の恋」。
その魅力を徹底分析── !
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