講談社文庫

ビートルズを知ると倍面白い『ラバー・ソウル』井上夢人の魅力


ぼくとビートルズとラバーソール

――私はビートルズにあまり詳しくないにも拘らず「イン★ポケット」で「ラバー・ソウル」の連載担当を務めさせていただきました。生粋のビートルズファンからしたら許せないような担当編集ですよね。でも、もしかしたら私レベルの方は少なくないのかも! ということで、改めて井上さんに「ぼくとビートルズとラバー・ソウル」というテーマでなんでも聞いてしまおうと思っております。今日は5月17日、なんたってポール・マッカートニーのコンサートの日ですしね!
井上 ビートルズのことなら何時間でも話しますよ。連載の原稿書いてないけど来ちゃいました。
――え、連載って「逆立ちするクロノス」ですよね。そ、それは「小説現代」のWに怒られるんですが……。では急ぎ聞きましょう! まずは井上さんとビートルズとの出会いについて教えてください。
ビートルズとの出会いは
中学1年生の夏
井上 忘れもしない1964年、中学1年生の夏休み。「A HARD DAY'S NIGHT」、日本でのタイトルだと「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」という映画が公開されたんです。そうしたら学校から禁止令が出まして。「ああいうものを観てはいけません」と。東京中の学校でお達しがあったと思いますよ。ロックは悪の権化と言われていましたからね。
――悪の権化……。井上さんは当時ロックがお好きだったんですか。
井上 ぼくはあんまり興味なかったんですよ。ポップスも聞いてなかったし、少年合唱団に入っていたくらいですから。

続きはIN★POCKET6月号をご覧ください

▲ページトップへ

辻村深月インタビュー


今までの10年、これからの10年

――二〇〇四年に『冷たい校舎の時は止まる』でデビューした辻村さん。デビューから今年で十年が経ちました。振り返ってどんな十年間でしたか?
「もう十年」と「まだ十年」という気持ちがそれぞれ半分半分。とても密度の濃い十年だったと思います。
――今年に刊行される『盲目的な恋と友情』、『ハケンアニメ!』、『家族シアター』の三冊を加えると、デビュー十年で、二十二作の本を刊行されたことになります。転機となるような作品、印象的な作品はありますか。
 一回目の転機は『凍りのくじら』と『ぼくのメジャースプーン』ですね。これはほぼ同じ年に書き下ろした作品なんです。
 デビュー作の『冷たい校舎~』からずっと描き、もがき続けた青春時代の葛藤を、封じ込めるようにして書いた『凍りのくじら』。そして、その青春時代への思いを封じ込め、独立した世界観を構築した上で「ミステリー」として仕上げた『ぼくのメジャースプーン』。この二作をデビュー一年目から二年目の間に書けたことはとても大きなことでした。
 当時はまだ兼業だったこともあって、講談社でしか仕事をしていなくて。このデビューして間もない期間に、一つの出版社の編集者と関係を築き、自分の世界観を築かせてもらったことはその後の財産になっています。その集大成が、この二作です。
 そして次は『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』。三年ぶりくらいの書き下ろし作品でした。
 前年に刊行した『太陽の坐る場所』の頃から、現実に軸足を置いたものをきちんと書いてみようと考えていたんです。私自身がちょうど二十代後半から三十代に差し掛かるくらいの年齢で、この年代の女性の気持ちとかそういうものを今のうちに書いておきたい、と思って。結果、それまで書いてきた青春時代以外で、現実に起こりうる問題や、いわゆる「女子」たちのことを、自分の領域として開拓できたと思います。まさに、このときに書けてよかった作品です。

続きはIN★POCKET6月号をご覧ください

▲ページトップへ