講談社文庫

□2017年02月号目次

呉勝浩インタビュー 最新刊『白い衝動』の衝撃

 第61回江戸川乱歩賞受賞のデビュー作『道徳の時間』の刊行から、一年と五ヵ月。第二作『ロスト』の大藪春彦賞ノミネートでも注目を集めた呉勝浩が、早くも第四作となる長編『白い衝動』を完成させた。ありえないはずの配合で「社会派」と「本格」を融合させることに成功した、ミステリ史に残る傑作だ。デビューからの三作がなければ辿り着くことのなかった、到達点の高みを探る。

── 『道徳の時間』(2015年8月刊)が第六一回江戸川乱歩賞に輝いたというニュースは、選考会の議論がかつてなく沸騰したというエピソードとともに届けられました。単行本巻末には選考委員五名の選評が掲載されていますが、議論の中心は『道徳の時間』における、犯人の「動機」だったということが分かります。最新作となる第四作『白い衝動』もまた、「動機」を見つめる強烈な視線に貫かれた作品でした。翻ってみれば、第二作『ロスト』(2015年12月刊)、第三作『蜃気楼の犬』(2016年5月刊)もそうなんです。呉勝浩という小説家にとって「動機を書く」という行為は、ミステリ作品を構築していくうえで重要な要素なのでしょうか。

 呉 自分が小説を書こう、物語を書こうとなる時に、まず最初に思い浮かぶのはキャラクターの感情なんです。こういうキャラクターの、こういう状況のこういう場面のこういう感情を書きたい―そこからほぼ同時に設定だとか作品全体の構造がふわっと立ち上がってくる。例えば『白い衝動』で言うと、殺人衝動を抱えた少年がいて、その衝動を克服したいと悩んでいる。「殺したいけど、殺したくない」というアンビバレントな感情を書きたいって発想がまずあって、その少年に対峙するカウンセラーがいるだろうとなり、奥貫千早という主人公を設定しています。実際に小説を書き出してからも、ポイントポイントで思い浮かぶのはやっぱり、登場人物の感情なんですよ。そういう発想の仕方なので、どうしても動機の部分に注力せざるを得なくなるんです。何作か書いてきて思ったのは、人間の心が一番不可解だし、答えが出ない。その「謎」に、小説でどこまで迫れるのかっていう気持ちは強いです。

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