松岡 圭佑 瑕疵借り

どの物件にも起こりうる事件迫真の“賃貸ミステリ” 思わず涙する。 極みの短編集

事故物件公示サイト「大島てる」管理人 大島てる推薦! 「原発だって事故物件。殺人事件現場だけが嫌がられるわけじゃない」

“瑕疵借り”とは?

賃借人が死んだり事件事故が起きたりして、瑕疵説明責任が生じた物件にあえて住む者。瑕疵の説明責任を失効させるために裏で大家や管理会社がこっそり依頼する。

『瑕疵借り』物件MAP

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物件の情報が表示されます。
  • メゾンK 202号室

    「土曜日のアパート」

    1K/木造二階建てアパート

  • 茜荘 104号室

    「保証人のスネップ」

    1K/老朽化した二階建てアパート

  • サトリーハイム東池袋207号室

    「百尺竿頭にあり」

    1Kフローリング/二階建て木造アパート

  • 西棟714号室

    「転機のテンキー」

    3LDKファミリータイプ/14階建て賃貸マンション

「あぁ気になる。今の部屋の前の住人のことが!」

紀伊國屋書店新宿本店 森瑞人

「面白かった、泣かされた。」

書評家 青木千恵

単行本、文庫版同時刊行!

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訳あり物件に住み込む藤崎は不動産業者やオーナーたちの最後の頼みの綱。原発関連死、賃借人失踪、謎の自殺、家族の不審死……どうすれば瑕疵を洗い流せるのか。男は類い稀なる嗅覚で賃借人の人生をあぶり出し、瑕疵(かし)の原因を突き止める。誰にでも明日起こりうるドラマに思わず涙する”賃貸ミステリ”短編集。
「土曜日のアパート」「保証人のスネップ」「百尺竿頭にあり」「転職のテンキー」

解説

青木千恵(フリーライター、書評家)

著者の松岡圭祐さんは、『千里眼』『万能鑑定士Q』シリーズ合わせて累計1000万部を超える当代きっての人気作家だが、最近、さらにすごいことになっている。

2017年4月、講談社文庫から初の歴史長編『黄砂の籠城』(上・下)を刊行し、新境地への躍進が見事だ。本書も、新たな着想で書下ろされた連作短編集なのである。

本書の特徴を挙げると、まずは「訳あり物件」に着目した珍しさ、新しさだ。物語に登場する物件を挙げてみよう。

・「メゾンK」202号室=福島県いわき市の小規模な住宅街にある、二階建ての木造アパート。間取りは1K。フローリングで広さは6畳ほど。

・「茜荘」104号室=東京都杉並区阿佐ヶ谷。最寄り駅からかなり歩く、老朽化した二階建てアパート。6畳の和室、ダイニングキッチン扱いの4畳半フローリングの二間。

・「サトリーハイム東池袋」207号室=東京都豊島区の端近く、畑のなかにぽつんと建つ二階建ての木造アパート。1Kで6畳ほどのフローリング。天井が高く、安価な物件には不釣合いな自然木の梁が横断している。

・西棟714号室=千葉・印西牧の原駅最寄り、14階建ての賃貸マンション。ファミリー向け3LDK。近隣に商店街や大型商業施設があるが、空洞化が進むばかり。

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そもそもは何の変哲もない、4部屋に共通するのは「訳あり物件」であること。部屋を訪ねた人々は、本書の主人公、藤崎達也と出会う。三十代半ばぐらいの瘦せた男で、細い目、すっきり通った鼻筋、薄い唇。服装はカジュアルだが、無愛想で近寄りがたい。何者なのだろうか? 「瑕疵」に着目し、特異な主人公を登場させた着想が、ユニークで、鋭い。

次に、著者・松岡圭祐さんならではの「謎解き」も読みどころだ。少しでも新品がいいと、他人が使った痕を厭うのが通常の人間心理だが、実は「瑕疵」には、先の住人の「記憶」が残されている。物語を通し、先の住人の足跡が解き明かされていくのである。

例えば一編目、「メゾンK」202号室に暮らしていた峰岡修一の姿は、1年ほど親交を結んだ琴美の記憶に残るわずかなものでしかない。〈素性もろくに知らない他人に、なぜそうまで胸を痛めるのか〉。苦学していた辛い時に助けてくれ、励ましてくれた彼を想う琴美の能動性が、202号室のドアを叩かせ、扉が開いて顔を見せた藤崎と出会い、物語が展開する。本書の主人公、藤崎は変わっていて、先の住人の「記憶」を自分の生活のために消し去ることをしない。彼によって先の住人の真実が掘り起こされ、いろんなことに気づかされて、胸打たれる。「いのち」を解き明かすミステリーになっている。

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