講談社の近くにある、大の風野真知雄びいきという老舗蕎麦屋の大将が、味見方同心PVを作りました。これはちょっと面白いのでご紹介させていただきます。※映像は音声をオンにしてお楽しみください(担当編集者)
雷うどん
食べるときパチパチと 激しい音を立てる迫力麺
京橋を渡って右手を見ると、
〈雷うどん〉
という看板が見えた。
前から気になっていたうどん屋だが、けっこう高い値段がついていて、まだ入ったことはない。
もしも、本当に雷に撃たれたようになるうどんだったりしたら、悪事の域に入る。ここは一つ、調べてみてもいいだろう。(中略)
どこにも悪の気配はない。うまいものを食べさせ、おあしをいただくという単純な暮らし。食いものにまつわる悪は、どこから生まれるのだろう。
たちまち食べ終え、汁まですべてすすった。
胸のあたりをすぐに汗が流れはじめ、腹全体がほかほかしてきた。
この先、こんなうまいものを仕事で食べていくのかと思うと、月浦波之進は、なんだか同僚たちに申し訳ない気がした。
妖怪団子
「妖怪」という言葉に誘われ、怖いもの食べたさにお客殺到
「いまは江戸中の人間が食い道楽のとりこになってるから、食いもの屋がいちばん儲かるんだって」
「なるほど」
「でも、得蔵さんは、工夫のない食いもの屋は駄目だと言ってました。最近、妖怪団子というのが流行ってるでしょ」
「ああ。よく見るな」
団子に妖怪の名前がついているのだ。
一度、魚之進が買ってきたことがある。
たしか──。
ふつうのあんこがからんだものは〈まっ九郎〉。
白餡の団子には〈雪女〉。
あんこを餅の中に入れてしまったのが〈のっぺらぼう〉。
あんかけには〈だらだら坊主〉。
どれも、串の持つところに名前が書き込んであった。
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