講談社文庫 > 風野真知雄 隠密 味見方同心 特設ページ
「隠密 味見方同心」について
人気時代小説家・風野真知雄がはじめて講談社より刊行したシリーズ時代小説。二月、三月、四月の三ヵ月連続刊行を皮切りに九月に四巻目を発売。切れ者の兄・月浦波之進、気弱な弟・魚之進が、悪事の匂い漂う料理屋を隠密捜査する痛快捕物帳。

講談社の近くにある、大の風野真知雄びいきという老舗蕎麦屋の大将が、味見方同心PVを作りました。これはちょっと面白いのでご紹介させていただきます。※映像は音声をオンにしてお楽しみください(担当編集者)
雷うどん
食べるときパチパチと 激しい音を立てる迫力麺

京橋を渡って右手を見ると、
〈雷うどん〉
 という看板が見えた。
 前から気になっていたうどん屋だが、けっこう高い値段がついていて、まだ入ったことはない。
 もしも、本当に雷に撃たれたようになるうどんだったりしたら、悪事の域に入る。ここは一つ、調べてみてもいいだろう。(中略)
 どこにも悪の気配はない。うまいものを食べさせ、おあしをいただくという単純な暮らし。食いものにまつわる悪は、どこから生まれるのだろう。
 たちまち食べ終え、汁まですべてすすった。
 胸のあたりをすぐに汗が流れはじめ、腹全体がほかほかしてきた。
 この先、こんなうまいものを仕事で食べていくのかと思うと、月浦波之進は、なんだか同僚たちに申し訳ない気がした。

(『隠密 味見方同心(一) 鯨の姿焼き騒動』より)
妖怪団子
「妖怪」という言葉に誘われ、怖いもの食べたさにお客殺到

「いまは江戸中の人間が食い道楽のとりこになってるから、食いもの屋がいちばん儲かるんだって」
「なるほど」
「でも、得蔵さんは、工夫のない食いもの屋は駄目だと言ってました。最近、妖怪団子というのが流行ってるでしょ」
「ああ。よく見るな」
 団子に妖怪の名前がついているのだ。
 一度、魚之進が買ってきたことがある。
 たしか──。
 ふつうのあんこがからんだものは〈まっ九郎〉。
 白餡の団子には〈雪女〉。
 あんこを餅の中に入れてしまったのが〈のっぺらぼう〉。
 あんかけには〈だらだら坊主〉。
 どれも、串の持つところに名前が書き込んであった。

(『隠密 味見方同心(一) 鯨の姿焼き騒動』より)
シリーズ書籍情報
[書影]講談社文庫
『隠密 味見方同心(四)恐怖の流しそうめん』
9月15日刊行!
定価 : 本体610円(税別)
>>講談社BOOK倶楽部
死んだ兄の食べた、この世のものとは思えないほどうまい食べ物とはなにか?それが犯人を捜す唯一のてがかり。美味しそうな江戸中の食べ物を食べ尽くせ!
[書影]講談社文庫
『隠密 味見方同心(一)
鯨の姿焼き騒動』

定価 : 本体610円(税別)

>>講談社BOOK倶楽部
[書影]講談社文庫
『隠密 味見方同心(二)
干し卵不思議味』

定価 : 本体610円(税別)

>>講談社BOOK倶楽部
[書影]講談社文庫
『隠密 味見方同心(三)
幸せの小福餅』

定価 : 本体610円(税別)

>>講談社BOOK倶楽部

A:1311