旅をしているとき、車窓に映る小さな町のなにげない風景を眺めながら、ここにも、あそこにも、誰かの人生があるのだと、いつも思う。
その誰かは、ほかの誰かのことを大切に思っている。けれど、自分も誰かに大切に思われていることに気づいていない。気づかなくても、誰かが誰かを大切に思っている限り、それが幸せな世の中を作り出すんじゃないかな。
見知らぬ町を歩くとき、心地よい風が吹き、なんともいえない幸福感に包まれることがある。それはきっと、おだやかな日常がそこにあるからだ。その日常は、誰かが誰かを大切に思っているからこそ、そこにあるのだ。
あなたがもしも、いま、なんということのない日々を生きているとしたら、それはきっと、あなたが誰かの大切な人であることの証しだ。それが言いたくて、私は、この物語たちを書いた。あなたは、きっと、誰かの大切な人。どうか、それを忘れないで。
母が亡くなった。だが、告別式に父の姿はない。
父は色男な以外はまったくの能無し。
典型的な「髪結いの亭主」だった……。
メキシコ系アメリカ人の友人エスター。
彼女は60歳で結婚をして、5年後に夫と死別したのだという。
その愛の物語とは……!?
勤務先の美術館に宅配便が届いた。
差出人はひと月前に他界した父。
母には疎まれながらも、現代アートを理解してくれて……。
イスタンブールを訪れた。
トルコを紹介する小説を書くために。
そこで聞いたトルコの春巻と、母親の味の話は……。
大学時代の同級生ナガラとは年に4回くらい旅をしている。
今回、近場の赤穂温泉を選んだのには訳があって……。
メキシコを代表する建築家、ルイス・バラガンの邸までやってきた。
かつてのビジネスパートナーの「目」になるために……。