講談社文庫

松岡圭祐2大シリーズ驚愕のクロスオーバー小説 探偵と鑑定士、究極の推理合戦! 3月15日刊行「探偵の鑑定!」 4月15日刊行「探偵の鑑定II」
「ふたりの主人公に出会いのきっかけを与えると、あとはキャラクターが動いてくれました」作家|松岡圭祐

あらゆるものごとの真贋を見抜く凜田莉子が、鮮やかに事件を解決する『万能鑑定士Q』シリーズ。探偵事務所の「対探偵課」なる部署に属する紗崎玲奈が、悪徳探偵を潰すために暗躍する『探偵の探偵』シリーズ。いずれも松岡圭祐さんのミステリー小説のなかで高い人気を誇る作品群だ。「あの主人公同士が、同じ舞台で活躍する話があったら、ぜひ読みたいのに!」ファンなら誰しも、そんな思いを抱いたことがあるはず。読者の願望に、なんと作者が応えてくれた。莉子と玲奈が共闘する松岡さんの新作は、その名も『探偵の鑑定』と相成った。

──今作は、読者の夢を叶えるために書いてくださった?

 両作品がコラボレーションすれば面白そう。そんな声があるのは承知していましたし、作者としてそれはよく理解できます。小説は文字だけでできているので、同じページに莉子と玲奈の名前を書きさえすれば、いつでも簡単に共演させられるのはたしか。でも、それでは単なるイベントごとに過ぎない。ストーリーにしろテーマにしても、ふたりが揃うことに大きな意味があり、納得のいくものになるならば、書いてみようと考えたのです。

──執筆を決意させた、莉子と玲奈が顔を揃えることの「意味」とは?

『探偵の探偵』の玲奈と『万能鑑定士Q』の莉子は対極で、ちょうど童話『北風と太陽』の関係です。玲奈は相手と真っ向からぶつかり、力業でねじ伏せる。いわば北風のような存在といえます。莉子のほうは、自発的に相手を改心させる優しさを持つ。つまりは太陽ですね。それぞれのシリーズは、北風と太陽の話だったわけです。そうして書き継いでいくと、どちらのシリーズも、最終的なテーマがおのずと見えてくる。北風は、太陽のような存在を受け入れられるようになるかどうか。太陽は、北風が吹く状況でも太陽であり続けられるのか。そんな試練と直面します。最後はそこを解決しなければ終われない。そう考えると北風の玲奈と太陽の莉子、両者をいっしょにして影響を与え合えば、テーマがうまく完結し得るのではと考えました。

──確固とした作品世界を持つふたつの小説を融合させるのは、困難も多そうですが?

 どちらも長いシリーズなので、すでにさまざまなストーリーが展開され、人物のキャラクターはしっかりと確立しています。ふたりの主人公に出会いのきっかけと舞台設定を与えれば、あとはキャラクターが動いていってくれました。

──たしかにこれまでの作品と同様に、今作もストーリーが生き生きとして、キャラクターも伸び伸びと動いている印象です。構想は事前に細部まで決まっているものなのですか。

 おそらく多くのミステリー作家もそうでしょうけれど、ゴールは最初に設定しておいて、そこから逆算していって話をつくります。同時に、キャラクターの動きは時系列で進行させていく。うしろと前、両方からの折り合いで物語は生成されていきますね。細部まですべて設計図のようなものをつくってしまうと、ストーリーがうまく転がっていかないものです。とはいえ、文庫にして100ページ分くらいのプロットはつくってから書いていますので、執筆中はあまり迷うことなく進みますよ。いつも締め切り前に完成します。編集者や出版社を待たせることが一切ないのは、ちょっとした自慢ですね(笑)。

──玲奈は探偵としての知識を活用して戦い、莉子は鑑定士としての知見を駆使して問題の解決に臨む。広範かつ最新の「知」が作品内には満載です。作者としてはいったいどのように膨大な情報を扱っているのでしょう?

 玲奈や莉子は状況ごと瞬時に適切な知識を出すのですごく頭がいいように見えますが、こちらは手元に資料やPCがあります。調べながら書いているだけです。正しく最新の情報を用いることは、作品の信頼性とリアリティにかかわりますから、絶えずアンテナを張っています。また、情報の出し方も大切ですね。知識がいくらたくさん羅列されていても、それだけでは文章が頭に入ってこない。人が興味深く思えるものごとを取捨選択し、うまくストーリーに絡めていく。そうして初めて、単なる情報が〝文芸〞へと昇華するのだと思います。

「探偵の鑑定I」松岡圭祐 3月15日刊行ご購入はこちら

「探偵の鑑定II」松岡圭祐 4月15日刊行ご購入はこちら

天然キャラの凜田莉子が、その振る舞いとは反対に信じられない鑑定眼で難事件に立ち向かう『万能鑑定士Q』。ストーカー殺人の被害家族で決して笑わない美女、紗崎玲奈が「対探偵課探偵」として悪徳探偵を追う『探偵の探偵』。読者を興奮の渦に巻き込んだ松岡圭祐2大シリーズの世紀のコラボレーションが実現する。二人が究極の推理合戦を披露しつつ、それぞれの作品世界の今後がエキサイティングに描かれる『探偵の鑑定』。これは2016年のエンタメ小説界に衝撃を与えるサプライズだ。

  • 凜田莉子(りんだ・りこ)

    「万能鑑定士Q」松岡圭祐

    日本最南端の有人島・沖縄県波照間島で育った莉子は圧倒的な天然キャラで、音楽と体育以外オール1の劣等生。上京後、莉子の素質を見抜いた雇い主のおかげで鑑定士としての観察眼を急激に身につけた莉子は二十歳で独立。依頼品に絡んで勃発する難事件に、莉子は「ロジカル・シンキング(論理的思考)」を駆使した鑑定眼で立ち向かう。

  • 紗崎玲奈(ささき・れな)

    「探偵の探偵」松岡圭祐 4月15日刊行

    最愛の妹・咲良をストーカーに殺され家族は崩壊。悪徳探偵への復讐を胸に誓った玲奈は、高校卒業後、探偵学校スマPIスクールの門を叩く。調査会社スマ・リサーチ社長、須磨康臣から直々に探偵業務の手ほどきを受けた玲奈は、悪徳探偵の悪行を暴く「対探偵課探偵」となる。しかし玲奈には、危険で苛烈な対探偵業務が待ち受けていた。

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  1. 『水鏡推理』松岡圭祐
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松岡圭祐プロフィール

まつおか・けいすけ 1968年、愛知県生まれ。『催眠』で作家デビュー。代表作は『千里眼』シリーズ(大藪春彦賞候補作)、『万能鑑定士Q』シリーズ、『探偵の探偵』シリーズなど。『万能鑑定士Q』と『探偵の探偵』のダブル完結編『探偵の鑑定Ⅰ・Ⅱ』を今春、講談社文庫より刊行して話題となる。本書は『水鏡推理』シリーズの第3作。

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