講談社文庫

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桑原崇が歴史の裏に
隠された謎を解き明かす!
QEDシリーズ

『QED 神鹿の棺』

パワースポットと呼ばれる東国三社と
「常陸」の国名に秘められた謎!

茨城県山中の寂れた神社で大瓶に入った白骨死体が発見される。その話を友人の小松崎から聞いた桑原崇は、由緒不明の神社の祭神に興味を抱き、茨城へ。
彼らが現地に到着する前に新たな遺体が瓶のなかから発見されたという報せが。
「水死かな」次の事件を予見する崇の目に見えているものとは? QED最新作!

著者コメント

『QED 神鹿の棺』

 最近「常陸」という地名が読めない若者が多くなっているという話を耳にしました。しかし、考えてみれば「常陸」がどうして「ひたち」と読めるのか不思議ではないでしょうか。「常」の文字には「ヒ」「ヒタ」という読みはありません。「常陸」を「ひたち」と読める我々の方が間違っているような気すらしてきます。

 また、地名の語源に関する色々な説明にも目を通しましたが、やはり納得がいきません。この「常陸」という名称は、一体どこからきているのか……。

 今回は、その「常陸国一の宮」――茨城県の「鹿島【かしま】神宮」の話です。

 平安中期に編纂された、官弊社の一覧『延喜式神名帳【えんぎしき・じんみょうちょう】』には「神宮」と号された社が、たった三社だけ記載されており、一社はもちろん伊勢国の「伊勢神宮」。残りの二社は、常陸国の「鹿島神宮」と下総【しもふさ】国の「香取【かとり】神宮」。

 熱田神宮も石上【いそのかみ】神宮も平安神宮も、もちろん出雲大社も大神【おおみわ】神社も「神宮」と呼ばれていなかった時代に、何故、京から遥か遠く離れた東国のこの二社が「神宮」という特殊な地位にいたのでしょうか。


 その理由に関してさまざまに述べられていますが、全て明らかに後づけです。当時はもっと論理的で、そうせざるを得ない理由があったのです。

 そもそも「鹿島」という名称が、どこから来ているのか?


 「鹿の島」というのは一体どういうことなのか……。

 しかも鹿島・香取の二神宮に、やはり常陸国に鎮座する息栖【いきす】神社を加えると「東国三社」となり、見事な「直角二等辺三角形」を作り出します。現在では「東国三社パワースポット」として一般の方々にも大変人気のようですが、そもそも誰が何のために、この場所に「直角二等辺三角形」を作ったのか?

 もちろん、偶然にそうなったわけではありません。そこには間違いなく「何者か」の「ある意図」が働いていました。というのも、鹿島神宮と息栖神社は同じ年にわざわざ現在地に遷座されているからです。

 その意図は一体何なのでしょう。この場所に「直角二等辺三角形」を作らなくてはならないと考えた理由は? 追求して行くと、とんでもない事実にぶち当たりました。正直ぼくも「まさか」と思わず目を疑ってしまうほどでした。


 茨城県は、余り人気がないという話も聞きます。しかし、この常陸国には鹿島・息栖だけではありません。

 「大洗磯前【おおあらい・いそざき】神社」「酒列【さかつら】磯前神社」「大甕倭文【おおみか・しとり】神社」「静【しず】神社」などなどの、長い歴史と謎に満ちた神社が数多く存在しています。余りに素晴らしいので、かえって悪口を叩かれているのではないかと邪推してしまうほどです。

 今回は、長い間、眠られていた神々を揺り起こしてしまったような気もしています。少し恐ろしいこの旅に、ぜひ皆さまもおつき合いいただければ幸いです。

高田崇史

プロフィール

高田崇史(たかだ・たかふみ)

昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒業。『QED 百人一首の呪』で、第9回メフィスト賞を受賞し、デビュー。歴史ミステリを精力的に書きつづけている。近著は『古事記異聞 陽昇る国、伊勢』『江の島奇譚』『猿田彦の怨霊 小余綾(こゆるぎ)俊輔の封印講義』など

QEDシリーズ登場人物紹介
  • 桑原崇 Takashi Kuwabara

    S42(1967)2月25日生まれ。(菅原道真の命日)

    丁未。六白金星。うお座。O型。長身、色白。ボサボサの髪。長いまつげ。あだ名を「祟(タタル)」

    職業:薬剤師。

    趣味:寺社巡りと墓参り。


    H2、明邦大学薬学部薬剤学科卒業。漢方学研究室。

    4年次には「オカルト同好会」会長を務めた。

    H4、目黒区杵築の「萬治漢方」に勤める。

    実家は浅草。代々木駅徒歩6分のマンションの402号室に1人暮らし。

    スポーツは一切しない。

    尊敬する人物は、司馬遷。

    座右の銘は「手酔ヒ足酔ヒ我酔ヒニケリ」(『袋草子』)

  • 棚旗奈々 Nana Tanahata

    S43(1968)7月7日生まれ。

    戊申。五黄土星。かに座。B型。

    黒髪。ストレートのセミロング。笑うと右頬にえくぼ。

    職業:薬剤師。

    趣味:茶道(裏千家)


    H3、明邦大学薬学部薬剤学科卒業。物理化学研究室。

    卒論「エマルジョン粒子の安定性に対する、アミノ酸溶液の影響について」

    卒業後、知人の紹介で目黒区祐天寺の「ホワイト薬局」に就職。

    実家は北鎌倉。桜木町の2LDKマンションに、4歳年下の妹・沙織と同居していたが、沙織は結婚することになり、部屋を出た。

    尊敬する人物は、鈴木梅太郎(世界で初めてビタミンB1を発見した人物)。

    座右の銘は「花をのみ待つらむ人に山里の 雪間の草の春を見せばや」(藤原家隆)

    携帯の着メロは「ロンドンデリーの歌」(クライスラー)

  • 小松崎良平 Ryohei Komatsuzaki

    S41(1966)11月1日生まれ。

    丙午。七赤金星。さそり座。AB型。

    長身巨漢のため、あだ名は「熊つ崎」。

    嘘アレルギーで、ひどい嘘をつかれるとくしゃみが止まらなくなる。

    職業:フリー・ジャーナリスト

    趣味:空手。松濤館流三段。吾妻橋高校時代は、空手部副将。


    H2、明邦大学文学部社会学科卒業。

    4年次には体育会系空手部の主将を務めた。東日本大会や、全国大会も出場。

    一年時に語学を全部落として留年。そこで崇と出会う。

    実家は東日本橋。

    叔父に警視庁捜査一課・岩築竹松警部。岩築の部下・堂本素直巡査部長も知人。

    尊敬する人物は、ロバート・ケネディ。

    座右の銘は「是非に及ばず」(織田信長)

  • 外嶋一郎 Ichiro Sotojima

    S27(1952)6月6日生まれ。

    壬辰。三碧木星。ふたご座。A型。

    眼鏡をかけたモアイ像のような顔。アルコール全くダメ。分解酵素を持っていない。

    酷い花粉症。

    職業:薬剤師。

    趣味:オペラ鑑賞。冬山散策。


    S51、明邦大学薬学部薬剤学科卒業。定量分析化学研究室。

    S60、「ホワイト薬局」勤務。

    H1、同薬局店長になる。

    実家は横浜。祐天寺のマンションに1人暮らし。

    姉の駒子は、某病院勤務。遠い親戚に、相原美緒(祖父同士が兄弟)。

    尊敬する人物は、カルロス・クライバー。

    座右の銘は「遅寝、遅起き、お掃除嫌い」(おそ松くん)

QED 作品一覧

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