万能鑑定士・凜田莉子が難事件を次々解決する松岡圭祐の「万能鑑定士Q」シリーズ。累計450万部の人気シリーズがついに最終巻を迎える。『万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの〈叫び〉』は『探偵の鑑定Ⅰ』『探偵の鑑定Ⅱ』からストーリーを引き継いで講談社文庫から刊行となる!
クライマックスにあたる『探偵の鑑定』では〝人の死なないミステリ〟と真逆にあるような、暴力的な現実と主人公を対峙させました。もっともこれは『万能鑑定士Q』のタイトルを冠した作品ではないので、シリーズの時間軸上にありながら、やや外れたところにあるという作品になっています。『万能鑑定士Q』のブランドネームでは〝人の死なないミステリ〟を貫いたとも言えるんです。今回は『探偵の鑑定』の続きでありつつ、角川文庫の『万能鑑定士Q』シリーズの続きとしても楽しめる内容になっています。
〝面白くて知恵がつく、人の死なないミステリ〟のキャッチフレーズで愛されてきた「万能鑑定士Q」がとうとう完結を迎える。ご存じのとおりこのシリーズは、美貌の万能鑑定士がさまざまな事件に遭遇し、知恵を使って解決してゆくという物語。映画化・コミカライズされ、海外でも知名度のある作品だけに、ここで完結させてしまうのはもったいないのでは……と第一作から追いかけてきたファンとしては思っていたのだが、前作『探偵の鑑定Ⅰ』&『探偵の鑑定Ⅱ』を読み、今回の『万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの〈叫び〉』を読むにいたって、すっかり考えを改めた。シリーズの完結編として、これ以外の展開は考えられない!
ふり返ってみると「万能鑑定士Q」という作品は、さまざまな知識を満載したエンタメミステリーであると同時に、凜田莉子というヒロインの人生を描いた物語でもあった。波は照間島から上京し、鑑定士としての才能を開花させた莉子は、『探偵の鑑定』の事件を経て、今回ついに自分の居場所を見つけるにいたる。莉子の人生にひとつの答えを導き出した本作で、シリーズが区切りを迎えるのはいわば必然。人気シリーズをあえて完結させ、ムンクの『叫び』という大ネタで華やかにフィナーレを飾ってくれた著者の作家的誠実さには、あらためて拍手を贈りたい。
絵画窃盗犯との謎解きゲームをはじめとして、全編が読みどころといっても過言ではない本作だが、個人的に心に残ったシーンが3つある。一つは美術品コレクターの屋敷で、莉子が室内の会話を盗み聴きするシーンだ。通風口から会話を盗聴するというテクニックは、『探偵の探偵』のヒロイン・紗崎玲奈から教わったもの。これまで探偵嫌いを公言してきた莉子のたしかな心の変化が見てとれ、しみじみさせられた。二つめは元贋作者・雨森華蓮との別れのシーン。鑑定士と贋作者という立場でなければ親友同士だったかもしれない2人。その心の交流を言葉少なに描いたシーンは、歴代の人気キャラが総登場する本作にあってもひときわ印象的だった。
そして3つめが事件解決後に描かれるラスト。ネタバレになるので詳しくは書けないが、鑑定を依頼してきた客に対して莉子が発するセリフがいい。ひとつの物語の終わりと新たなスタートを感じさせるこのシーンを読んで、私は素直にこう呟くことができたのだった。さようなら、凜田莉子。いつまでもお幸せに!
凜田莉子が『探偵の探偵』の対探偵課探偵・紗崎玲奈と初めて出会うクロスオーバー作品。『万能鑑定士Qの最終巻』は『探偵の鑑定』から直接つながるストーリーとなる。
ご購入はこちらキャラクター小説ブームのさきがけともいえる大人気シリーズ。角川文庫からはシリーズ既刊20巻、スピンアウト作品の『特等添乗員αの難事件』シリーズも含めると25巻を数える。世の中全ての物を鑑定する美女、という発想は極めてユニーク。第9巻は『万能鑑定士Qモナリザの瞳』として綾瀬はるか主演で映画化された。