OVER DRIVE
橘もも
ラリーに挑む男たちの愛と魂の軌跡。試されるのは、兄弟の絆。
生真面目で、確かな技術を持ち信頼されるメカニックの兄・檜山篤洋。世界ラリー選手権への挑戦を目指している天才的ドライバーの弟・檜山直純。篤洋のアドバイスを無視して無謀で危険なドライビングをする直純は、ラウンドを重ねるごとに兄との衝突を繰り返す。そんなある日、直純のエージェントとして、遠藤ひかるがやってくる。彼女を待ち受けていたのは、檜山兄弟の確執に秘められた鮮烈な過去、チーム全体を巻き込む試練だった。
生真面目で、確かな技術を持ち信頼されるメカニックの兄・檜山篤洋。世界ラリー選手権への挑戦を目指している天才的ドライバーの弟・檜山直純。篤洋のアドバイスを無視して無謀で危険なドライビングをする直純は、ラウンドを重ねるごとに兄との衝突を繰り返す。そんなある日、直純のエージェントとして、遠藤ひかるがやってくる。彼女を待ち受けていたのは、檜山兄弟の確執に秘められた鮮烈な過去、チーム全体を巻き込む試練だった。
1988年生まれ、埼玉県出身。2012年、『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューし、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞、第67回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。『クローズ EXPLODE』(14年)で映画初主演を務める。最近の作品に、『デスノート Light up the NEW world』(15年)、『聖の青春』(16年)、『関ヶ原』(17年)、『散歩する侵略者』(17年)など。待機作にTVドラマ『コンフィデンスマンJP』(CX)、2018年公開予定の映画『パンク侍、斬られて候』、『菊とギロチン』、『寝ても覚めても』に出演。
橘つい先ほど完成してはじめて映画をご覧になったんですよね。
東出やっと僕たちのレースが終わった、という安堵感がありました。それから、羽住監督のもと、この映画に出会えて本当によかったと。ラリー映像の製作にかかわっていなかったので、さっき初めて観たんですけど、めちゃくちゃかっこよかった。まさに血沸き肉躍る。エンジン音の迫力や、音楽の入り方、走りの疾走感。レインボーブリッジを走り抜けるシーンなんかは、観ていてわくわくしました。兄弟の物語ではありますけど、やっぱりレースに魅力のある作品ですよね。
橘私が観たときはまだ編集中の状態だったんですけど、それでも迫力がすごくて、画面に呑み込まれるように観ていました。と同時に、これを小説にするのかと(笑)。
東出プレッシャーだったと思います(笑)。
橘ラリーを映像で観ることはありましたが、車のことなんて何も知らないので。部品の描写もなんのことやら。もともとモータースポーツには詳しかったんですか?
東出いや、実をいうとはじめはまったく興味がなくて。僕も全然わからなかったんです。もちろん、現場に入る前にセリフの意味を理解できるようひととおり勉強はしましたけど、はじめて聞く単語ばかりで。エキゾーストマニホールドとか、僕の人生には存在していなかったから(笑)。この映画に参加しなかったら、一生聞くことがなかったでしょうね。
橘東出さんは、専門的な役を演じる場合、その分野をかなり勉強されるイメージなのですが、今回は何かされました?
東出撮影前に、勉強会が設けられていたんですよ。映画で使われたのは、ヤリスという実際にWRC(世界ラリー選手権)で活躍しているトヨタの最強マシンなんですが、同じものをアフリカから購入してきて。東宝のスタジオでそれをばらしたり組み立てたりしながら、構造や部品の名前を教えてもらいました。それでも足りないという人は、補習を受けさせてもらったり。
橘それは、メカニック役の全員で?
東出はい。やっぱり、現場に入るまでには、知識はもちろん自分でばらしたりできるようになっていたかったので。そのほかにも、助監督チームが資料を集めてくださったんですけど、その分厚さったらなかった。ネット検索もしながら、けっこう勉強した記憶はありますね。
橘いきなり部品の話ばかりしてしまいましたが(笑)、最初に脚本を読んだ印象はいかがでしたか。
東出シンプルに熱いな、と。すごく王道のエンターテインメントですよね。
橘東出さんの演じた檜山篤洋は、スピカレーシングのチーフメカニック。わりとメカニックバカというか、ふだんは物静かなのに、部品について語らせたら止まらなくなるような性格でしたよね。森川葵さん演じる新任エージェントの遠藤ひかるが、そんな篤洋にあっけにとられるみたいなシーンもありました。
東出あのシーン、撮影初日だったんですよ。だからめちゃくちゃ練習したんですけど、まだ現場の雰囲気に慣れきっていないから、なかなか難しくて。しかもけっこうな長台詞ですし、大変でした。
橘淡々と、でも熱く、専門用語を並べたてて。湧きでるメカへの愛情が、画面からひしひしと伝わってきました。東出さんから見た篤洋はどんな人物でしたか?
東出長男として、チーフメカニックとして、常に重圧を抱えている男だなと思いました。同じチームで働いているからよけいに、弟の直純に対してはどちらの顔も見せなきゃいけない。一方で、うまくいかないことの原因は自分の外側にあると思っていて、だからこそ直純にも厳しく接するんだけど、だんだん自分の内側にある至らなさに気づいていく。物語を通じて、芯の部分で成長していったなと。
橘対して、新田真剣佑さん演じる直純は、どんな人物と感じられましたか?
東出常にアクセルを踏み続け、まわりの言うことは一切聞かない。向こう見ずで危険な男のように見えるんだけど、その根底にあるのは抜群のピュアさだと思うんですよ。その両面を、マッケンが絶妙に演じていました。この弟がいてこその篤洋なんだな、と自然と感じられましたね。
橘東出さんにはお兄さんがいらっしゃるんですよね。
東出はい。で、マッケンには弟がいるんです。プライベートでは二人とも、逆の立場。それぞれの立場の苦労を知ったね、なんて話を現場ではよくしていました。
橘たとえば。
東出う~ん、たくさんありますけど……。「弟の前ではへまできない」ってこんなにも兄貴は思うものなんだな、とか。その気負いみたいなものは、初めて体感した気がします。弟は弟で、奔放なようでもいろいろ悩んでるんですよね。マッケンも、直純のその部分を演じるのは大変だったと思います。
橘新田真剣佑さんとは今回が初共演ですよね。
東出そうです。マッケンはなんていうか、貴公子みたい(笑)。白馬に乗った王子様ってこういう感じなんじゃないかなと思います。レーシングスーツを着て、逆三角形の鍛えられた身体で立っているのを見ると、それだけで惚れ惚れするというか。ビジュアルはいいし、笑顔も素敵だし、みんなで話しているときは求心力がある。彼の備えている天真爛漫さはすごく魅力的で、年上の男も惚れてしまう。この直純を死なせるわけにはいかないから、メカニック一同気を引き締めて頑張るぞ、みたいな気持ちにさせられました。
監督:羽住英一郎 脚本:桑村さや香 音楽:佐藤直紀
©2018「OVER DRIVE」製作委員会