鑑定テープと取材をもとに著者は、信頼と不信、愛情と憎悪の間で揺れ動く永山の人生の迷走を見事にあぶり出した。求めても決して与えられなかった人間的なぬくもり。どこにも存在できない己の人生。
そして永山は逡巡の末、石川医師に殺人の真の動機を吐き出した。
その一言は、あまりにも悲しい一言だった。
鑑定テープと取材をもとに著者は、信頼と不信、愛情と憎悪の間で揺れ動く永山の人生の迷走を見事にあぶり出した。求めても決して与えられなかった人間的なぬくもり。どこにも存在できない己の人生。
そして永山は逡巡の末、石川医師に殺人の真の動機を吐き出した。
その一言は、あまりにも悲しい一言だった。
原爆が炸裂したあの日も、チンチン電車は広島の街を走っていた。運転士と車掌の多くは14~17歳の女学生たち。兵隊に取られた男たちの代わりを務めていたのだ。本書は、彼女らが通った「幻の女学校」の存在を明らかにし、徹底した取材で、少女たちの青春と、8月6日のヒロシマを記録する。
1966年、強盗殺人の容疑で逮捕された22歳の長谷川武は、さしたる弁明もせず、半年後に死刑判決を受けた。独房から長谷川は、死刑を求刑した担当検事に手紙を送る。それは検事の心を激しく揺さぶるものだった。果たして死刑求刑は正しかったのか。人が人を裁くことの意味を問う、傑作ノンフィクション。
「永山基準」として名を留める、19歳の連続射殺犯・永山則夫。本書は、彼が遺した15,000通に上る膨大な書簡から、その凄惨な生いたちと、獄中結婚した妻との出会いにより、はじめて「生きたい」と願うようになる心の軌跡を浮かび上がらせる。永山基準の虚構を暴く問題作。
永山事件は、人間の闇が生み出したものだ。人は人とつながることで人になるが、つながれなかったゆえに生まれた闇である。本書は、これまで永山則夫を追ってきた著者の執念の結実にちがいない。
── 奥野修司(ジャーナリスト)