講談社文庫

『invert 霊媒探偵城塚翡翠』 相沢沙呼 『invert 霊媒探偵城塚翡翠』 相沢沙呼

城塚翡翠からの挑戦状! あなたは、探偵の推理を推理することができますか?

『invert 城塚翡翠倒叙集』 相沢沙呼

『invert 城塚翡翠倒叙集』

すべてが、反転。

綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。
だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが……。
ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?

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『medium 霊媒探偵城塚翡翠』 相沢沙呼

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』

すべてが、伏線。

死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女へと迫り――。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!

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ミステリランキング5冠獲得! ★第20回本格ミステリ大賞受賞★このミステリーがすごい! 1位 ★本格ミステリ・ベスト10 1位 ★SRの会ミステリベスト10 1位 ★2019年ベストブックさらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補! ミステリランキング5冠獲得! ★第20回本格ミステリ大賞受賞★このミステリーがすごい! 1位 ★本格ミステリ・ベスト10 1位 ★SRの会ミステリベスト10 1位 ★2019年ベストブックさらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補!

単行本刊行時 ミステリ界からも大絶賛の嵐、嵐、嵐! 単行本刊行時 ミステリ界からも大絶賛の嵐、嵐、嵐!

綾辻行人

ミステリ界随一の本格的な奇術家【マジシャン】でもある相沢沙呼の、巧妙にして実にイジワルな、それでいて実に胸の空く一撃!

有栖川有栖

この探偵のどこが凄いのかについては、読んだ人としか語り合えません。最後まで読み切った人としか……(含み笑い)。

青崎有吾

自ら禁じ手としていた殺人事件を解禁した相沢沙呼はやはり強かった……。

浅ノ宮遼

「すべてが、伏線」の初刷帯に偽りなし。本年度の必読作です!

芦沢央

帯でハードルを上げまくったのは正しかったと納得。というか感嘆。これは相沢沙呼にしか書けない傑作。

井上悠宇

”ちょっとばかし自信をつけたミステリ作家が格の違いを思い知らされて筆を折るレベル”の傑作でした。二度言います。傑作。

今村昌弘

これはまさに超力作の傑作。僕は特殊ミステリの最新形態と呼びたいです。特殊性をああ使うとは!

鵜林伸也

同年輩の本格ミステリの作家として「嫉妬」を覚えるほどの作品だった、というのが最大の褒め言葉になるのではないでしょうか。

岡崎琢磨

一冊の本を書くためにここまでやるか……。同じ作家として、その熱意を見習わなければいけないと思いました。

織守きょうや

この本は「叫びたくなる」だけじゃない。本格だった。純粋に「ミステリとして」おもしろかった。あと翡翠ちゃんはもちろん可愛いです。

斜線堂有紀

読んでいる間中翻弄され倒したのが面白かったです。翡翠ちゃん可愛い!は本当のことです。

似鳥鶏

この作品は「文庫化してから」ではなく今読んだ方が絶対楽しいやつです。理由は読めば分かります!

葉真中顕

完全に掌の上で転がされました。脱帽です。 「2019年最驚のミステリ」という惹句も絶賛の声も大げさじゃない。

降田天

最後まで読んですべてにやられました……。何を言っても野暮になる。相沢さんにしかお書きになれない作品です!

※このコメントは単行本刊行時(2019年)のものです。

著者コメント 著者コメント

 作家になって( ) 10年を迎えようとしています。(※単行本刊行時)

 これまで、主に「日常の謎」と呼ばれるジャンルを書いてきました。
 しかし、僕はずっと思い悩んでいたのです。

 ひょっとすると、自分にはミステリを書く才能がないのではないか……。

 いろいろなお話を書いてきましたが、どちらかといえば、ミステリではない青春小説を書いたときがご好評を頂けているような気もしていました。
 講談社タイガで書かせていただいた『小説の神様』が映画化の運びとなったとき、僕は思ったものです。
 「めちゃくちゃ嬉しいけれど、代表作がミステリではなくなってしまう!!」
 いずれ、僕が鮎川哲也賞出身作家であることを忘れてしまう人々も現れるのではないか……。
 この前も、どこかの編集さんが、「相沢さんってミステリも書けそうな作風ですよね」とか言っていたらしいぞ……。
 よし、このまま青春小説を書き続けるか……。

 ところがその最中、ありがたいことに、2017年に書いた『マツリカ・マトリョシカ』を第18回本格ミステリ大賞の候補作に選んでいただきました。本格を愛する方々が、候補に選んでくださったのです。このことは、自分の中に大きな意識の変化をもたらしてくれました。
 この作品をミステリとして好きだと言ってくれた人たちに、お礼をしたい。期待に応えたい、と思ったのです。
 作家になって10年目、自分なりの「本格ミステリ」を書こうと決意しました。

 いずれ書いてみたい、と思って眠らせていた作品の構想が、今ならまとめられるかもしれない。

 今回は「日常の謎」ではなく、自分が初めて挑んだ、殺人を扱ったミステリです。 少し変わった設定のお話ではありますが、そこに自分なりの本格のエッセンスを取り入れてみました。
 相変わらず自信というものからは程遠い性格をしているので、10年の節目に相応しい作品になったかどうかはよくわかりませんが、読んでくださった書店員さんたちが喜んでいただいたので、そこそこうまくできたような気もしています。

 いつも、僕の作品を好きだと言ってくださる皆さんがいるからこそ、書けたお話です。
 この場を借りて、お礼を申し上げます。

相沢沙呼

※このコメントは単行本刊行時(2019年)のものです。

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Profile

相沢沙呼(あいざわ・さこ)

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。

特別インタビュー 取材・文=檜原聖司 特別インタビュー 取材・文=檜原聖司

※このインタビューは、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位獲得時に掲載されたものです。

※作品の内容に触れる部分がございますので、未読の方は先に『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読まれることをお勧めいたします。

―― この度は『このミス』1位、おめでとうございます。
相沢 デビュー10年目という節目で1位を頂けてよかったなと思います。過去にミステリーのランキングにランクインする作品をそれほど書けなかったので、ここまでたどり着くのに10年かかったかと感慨深いです。
―― 『medium』はミステリー界隈で、今年大きな話題になりました。
相沢 いつも、主従関係として青春小説が主、ミステリーは従という意識で書いていました。でも今回はエンターテインメントとしてミステリーに振り切ったんです。これまでは自分のポリシーとして「日常の謎」を書いてきたので、できれば人が死なないミステリーでランクインしたかったんですが、『medium』は殺人事件を扱った小説です。だから、1位を頂いておいてなんなんですが、悔しい気持ちもあります(笑)。

ミステリーの入り口は映像から

―― ミステリーとの出会いを教えてください。
相沢 中学生の頃に見た「金田一少年の事件簿」のドラマですね。これは両親が見ているような2時間サスペンスとは違うぞ⁉ と驚いた。そこから「古畑任三郎」など、映像のミステリーが好きになっていきました。ですが、レンタルビデオ屋に行くのも一苦労な時代でしたので、ミステリーを味わいたいと思ったら結局小説を読むしかない。そこでシャーロック・ホームズから入って、アガサ・クリスティ、ディクスン・カーと読んでいきました。国内ミステリーに触れたのは、もう少し後でしたね。北村薫、加納朋子など「日常の謎」を読み進め、森博嗣の「S&M」シリーズにハマっていきました。
―― 自分で書くようになったきっかけは?
相沢 小説を書こうと思ったのは十代半ばです。ミステリーではなく、ライトノベルを書いては新人賞に送っていましたが、一次選考で落ちることも多くありました。当時から登場人物の日常にスポットライトが当たる繊細な話を描いていたのですが、今思うと普通のライトノベル向きではなかったんですよね。
どうすればこれをエンターテインメントにできるだろうと考えていたのですが、その時に出会ったのが北村さんの「円紫さんと私」シリーズだったんです。感情の機微に着目しながら、「日常の謎」という読者の興味を引く要素があり、それらが巧妙に混ざり合っている。「今の自分に足りないのはこれだ!」と思って、それから自分でもミステリーを書くようになっていきました。

デビューから10年の歩み

―― デビュー作の『午前零時のサンドリヨン』は、女子高生マジシャンの酉乃初(とりの・はつ)が活躍する「日常の謎」ミステリーです。
相沢 これも元々はライトノベルの新人賞に応募したキャラクター小説でした。その賞は二次選考で落ちてしまったのですが、たまたま同じ年の鮎川哲也賞の選考委員に、北村薫先生が加わったんです。北村先生に読んでもらえたらいいなと思い、改稿して応募しました。手がかりや推理パートを増やし、ミステリー要素を強化して送ったのを覚えています。
―― 酉乃シリーズでは、マジックとミステリーの融合が目指されています。
相沢 マジックが登場するミステリーはこれまでもありましたが、謎解きにタネ明かしが必ず絡んでいます。でも、自分はマジックが好きなのでタネを明かせない。それにタネだけがマジックの魅力ではないと僕は思っているので、なおさら避けたかった。そこで酉乃初シリーズでは、登場するマジックの現象に「日常の謎」が似通っていることや、マジックが人間の心理に関わってくることを意識しています。
実際書いてみると、自分がマジックに詳しいからこその難しさがありましたね。マジックを知らない人は、想像でマジックを書けます。空中から何かを出したり消したり、現実には無理なマジックの描写をしても咎められない。ただ、自分で書くなら、リアリティにはこだわりたかった。だから酉乃初シリーズに出てくるマジックはすべて、小説内の状況で実際に演じられるようなものを書いています。でもそのフェアさがわかるのは、裏側を知っている一握りのマジシャンだけですよね。かかるコストに対してリターンが少ないのが、酉乃初シリーズの最大の弱点です(笑)。
―― マジックは昔からお好きだったのですか?
相沢 最初の出会いは、中学生のときに手に取った、テンヨー(※マジックグッズを販売する玩具メーカー)の「ダイナミックコイン」でした。それ以来、手品道具をいくつか買ったりしていましたが、タネを知りたいというのが原動力でしたね。自分で演じるようになったのは、高校生の頃。テレビで見た前田知洋さんがきっかけでした。不思議なカードマジックの数々に、「このトランプはどこで買えるんだ」と思ったんです。自分で色々調べて、どうやらトランプに仕掛けはないらしいということを知り「そんなバカな!」と(笑)。それから手品本を買い始め、カードマジックを中心に覚えていきました。一番好きなマジックは、『サンドリヨン』の最初の話でも取り上げた「トライアンフ」ですね。表裏バラバラに混ぜたはずのトランプが、観客の選んだトランプ1枚を残して全て向きが揃ってしまうという手品です。オリジナリティがあって、ビジュアルで、裏側の過程が合理的にできている傑作です。
―― 『マツリカ・マジョリカ』から始まる「マツリカ」シリーズは、酉乃初シリーズと同じ「日常の謎」でも、テイストが違います。
相沢 僕は小説を書く際に、誰かの隣に寄り添える作品を書くと心がけていますが、それを強く意識し始めたのが、このシリーズです。
酉乃初シリーズは、悩みを持つヒロインを主人公が支える構造です。心理的なテーマを主人公サイドから書きづらいんですね。そこで、マツリカシリーズでは逆に、主人公の方が心理的な問題を抱えている設定にしました。マツリカさんという探偵役との関係性はコミカルにしつつ、そのほかの人間関係では、痛い想いや息苦しさを書くようにしています。
―― 思い悩む登場人物の心情が、鮮烈に描かれています。
相沢 実は1冊目の『マジョルカ』では、あえて登場人物たちの心理の問題に答えを出さないようにしました。『雨の降る日は学校に行かない』という小説を書いたときに特に意識したのですが、どんな登場人物の悩みを書いても、わかりやすいハッピーエンドで終わらせたら「結局はフィクション」「私はこうじゃない」と読者と距離が生まれてしまう。読んでくれた人が「私ならどうするだろう」と自分の環境と結びつけて考えられるように、想像の余地を残したんです。だから『マツリカ・マジョルカ』でも明確な解答を出さなかったのですが、それではモヤモヤするという人も多かったので、続編の『マツリカ・マハリタ』では主人公をより能動的に書き、明るいエンディングを心がけました。
―― シリーズ3作目の『マツリカ・マトリョシカ』は、密室を扱った、相沢作品初の長編本格ミステリーでした。
相沢 かなりミステリーに力を入れた作品で、書くのに2~3年の時間がかかりました。それまでの作品では、「日常の謎」だから本格ではないと評価されてしまうことが多々あったんです。だったら本格要素が強い「日常の謎」を書いてやろうと思い、密室ものの構想を練り始めました。そのときに自分に課していた「第一の制限」を外し、マジックの理論をトリックに持ち込んだんです。マジックのタネに考案者がいるように、理論にも原案者がいます。ミステリーに転用したら、自分なりの解釈を挟んだとしても、どこまでがオリジナルなのかが不透明になってしまう。なので意識して使わないようにしていたんですが、「気にしすぎだな」と思って(笑)。だから『マトリョシカ』では、奇術的な発想で密室を作っているんです。
―― 『小説の神様』は「物語」に正面から向き合った青春小説です。成立のきっかけは?
相沢 当時、本が売れなくて辛かったんですよ……(苦笑)。実は『僕が美少女作家のゴーストライターなわけがない』みたいなラブコメを書こうと思っていたんですが、それを書く前に本が売れない辛さがピークを迎えてしまい、「こんなものは書けない! ならばいっそこの思いをそのまま本にするしかなかろう!」と。自分の体験がどこまで反映されているかはご想像にお任せしますが、僕は美少女作家とは仕事できなかったので、そこはフィクションですね(笑)。
―― 実写映画化やコミカライズなどの、メディアミックスも進んでいます。
相沢 自分の小説のメディア化は初めてなので、ものすごく嬉しいですね。『小説の神様』は心理描写が多くて、小説以外の媒体で描くのは大変だろうなと思っていたんですが、漫画は面白いです。手名町紗帆(てなまち・さほ)さんの手で、漫画ならではの可愛らしさが出ており、小説の重たさが緩和されています。あんなにクールな美人編集者は現実にはいないですけどね(笑)。これから映画化も控えています。映像にするのはさらに難しいと思うのですが、あえてそこに挑戦するとのことなので、どう演出してくださるのか楽しみです。動きのない話なのに、ドローンとか飛んでるんですよ(笑)。映像ならではのオリジナリティにご期待ください。

初めて挑んだ
“殺人が起こる”ミステリー

※この先作品の内容に触れる部分がございますので、未読の方は先に『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読まれることを強くお勧めいたします。

―― 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、初めて「殺人事件」を扱った作品です。
相沢 『マツリカ・マトリョシカ』は、本格ミステリーに力を入れた作品だったんですが、シリーズものの3作目ということもあり、あまり売れなかったんです。自分にはミステリーは向いてないのかなと思って、しょんぼりしていました。
ところがその年、『マトリョシカ』を「本格ミステリ大賞」の候補にして頂けた。それが嬉しくて、ミステリーでもう少し頑張ってもいいんだと言ってもらえたような気になったんです。でも「日常の謎」では、『マトリョシカ』以上のことができるか自信がない。そこで自分に課していた第二の制限、「人を殺さない」を外し、初めて殺人事件が起こるミステリーを描きました。
―― これまでの作品とは一転、本格要素が全面に出ていました。
相沢 すべてを書こうとすると収まりきらないので、今回はテーマや心理に寄り添うよりも、とにかく本格ミステリーとして面白いものを、とターゲットを絞りました。デビュー10年という節目に、趣の違った作品を出すのもいいんじゃないかなと思ったんです。
実は、テーマ性を取っ払っても本格を書こうと決めたのには、もう一つ理由があります。マジシャンの前田知洋さんとたまに遊ぶのですが、「家に帰ったあとに誰かに話したくなるようなマジックを心がけている」と仰っていたんですね。それを聞いて僕も「誰かに話したくなるような小説を書きたいな」と思った。これまでの作品は内省的で、繊細な部分に共感してくれる読者はいても、「誰かと話したい」と思われる作品ではなかったなと気づいたんです。
―― あの「衝撃の真相」は、どのようにして思いつかれたのですか?
相沢 きっかけをくれたのは、タマリッツというスペインのマジシャンが書いた奇術の理論書「THE MAGIC WAY」です。この中で、「偽解決法の理論」というものが紹介されています。どんなマジックでも観客が解決法を見出したら魔法ではなくなってしまうから、抱きそうな疑念をマジシャンの方から先に、さりげなく提示して否定していくという理論です。そうすることで、真の手法にも気付かれにくくなるんですね。観客が自分で答えに辿り着いたつもりでも、それすらマジシャンの掌の上だったりする。この奇術的な理論をミステリーに応用したら、面白いのではと思ったんです。290ページ(註:単行本。文庫では363ページ)の部分などは、そうした影響で構成しました。
―― トリックのみならず、丹念に張られた伏線とロジックも大きな見どころです。
相沢 『medium』の各エピソードで中核になっているロジックは、元は「日常の謎」で使おうと思っていたネタを転用しているんです。どうでもよさそうな些細な手がかりに思いを巡らせて真相を導くような推理は、「日常の謎」でありがちですよね。そのことからも、「日常の謎」で普段書いているものとロジカルな部分の本質は同じだと実感しました。
―― 読者の反応はいかがでしたか?
相沢 書き上げてから刊行までに半年かかっているんです。「果たしてこの理屈で通じるか?」と何度も改稿したんですが、最後までマジックをするときの緊張感に似た、でもそれとは比べものにならないプレッシャーがありました。今回はこれまでとは違う「本格ミステリー好き」に届いたらいいなと思っていたので、重版もかかり、『このミス』1位に選ばれてほっとしています。でもそのお知らせをいただくまでは不安に思っていました。だって、初版の帯の言葉が「すべてが、伏線。」ですよ? 挑戦的すぎるんじゃないかと(笑)。帯含め、宣伝に関しては「あまり煽らないで」と、担当編集とぶつかる日々でした。結果的にはこの煽りで手にとってくれる読者もいて、いい方向に効いたと思います。
―― 今後のご予定をお教えください。
相沢 『雨の降る日は学校に行かない』に連なる、図書室を舞台にした青春小説の連作短編集が来年出ます。(註:『教室に並んだ背表紙』2020年12月刊行)ミステリーとして次に出せるのは、酉乃初シリーズの3作目になりそうです。『medium』の続編も書きますよ!(註:『invert 城塚翡翠倒叙集』2021年7月刊行)やりたいことがいくつかあるのですが、どれもジャンルや雰囲気が全く違うので、どの方向性で書くか悩んでいるところです。
こうして結果を出せたのは、この10年間、様々な形で支えてくださったファンの皆様のおかげです。それがあって、これまで書き続けることができました。ありがとうございました。これからも頑張って、小説を書いていきます。

(2019年11月 書泉ブックタワーにて)

※初出「このミステリーがすごい! 2020年版」(宝島社)

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