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『変幻』
公安を辞めさせられた男。特殊班で消息を絶った女。
同期を救うのは、俺だ —— 。
あらすじ
警視庁捜査一課刑事宇田川の同期、特殊捜査係女刑事大石が「しばらく会えなくなる」と言い、音信不通となった。かつて公安にいた同期蘇我と同じように。
同期二人の失踪に心を痛めるなか、臨海地区で暴力団関係者と思われる刺殺体が見つかる。現場の監視カメラ映像に残された同期だけにわかるメッセージとは?
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宇田川亮太
主人公。私立大を卒業後、警察官となった。念願かなって本庁へ転属となり現場の一線、警視庁捜査一課殺人犯捜査第五係所属。蘇我とは仲がよい。古参刑事からは「ボン」と呼ばれている。刑事の仕事にやりがいを感じている。
蘇我和彦
宇田川の同期で、私立大を卒業して警察官になったところも、年齢も同じだが、いつもゆったりと構えており、「世の中すべて、なるようになる。」というのがモットー。公安の眼にとまり、公安総務課勤務だったが、宇田川の危機を救った後、懲戒免職となり姿を消す。
大石陽子
宇田川・蘇我の初任科同期。女性警察官指定捜査員制度で、所轄の強行犯係から推薦され、SITと呼ばれる警視庁刑事部捜査一課特殊犯捜査係の配属となる。
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PROFILE
今野敏(こんの・びん)
1955年北海道三笠市生まれ。上智大学在学中の1978年「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞受賞。卒業後、レコード会社勤務を経て作家となる。2006年『隠蔽捜査』(新潮文庫)で吉川英治文学新人賞受賞。2008年『果断 隠蔽捜査2』(新潮文庫)で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞受賞。2017年「隠蔽捜査シリーズ」で吉川英治文庫賞受賞。「空手道今野塾」を主宰し、空手、棒術を指導。主な近刊に『スクエア 横浜みなとみらい署暴対係』、『マル暴総監』、『サーベル警視庁』、『回帰 警視庁強行犯係・樋口顕』、『虎の尾 渋谷署強行犯係』、『アンカー』、『武士マチムラ』、『道標 東京湾臨海署安積班』、『棲月 隠蔽捜査7』、『カットバック 警視庁FCⅡ』、『任侠浴場』、『キンモクセイ』、『機捜235』、『呪護』、『炎天夢 東京湾臨海署安積班』、『ST プロフェッション 警視庁科学特捜班』『継続捜査ゼミ』(ともに講談社文庫)などがある。
「同期」シリーズの大きな特徴は、同期の三人がそれぞれ異なった部署に配属されているという設定にある。宇田川は強行犯相手の捜査一課。蘇我は免職になる前は公安総務課で、現在は公安関係の秘密捜査に従事していると思われる。そして大石は特殊班。このように三者三様の立場を用意して、警察の担当部署を横断した事案がからんだプロットの構築をする。それがこのシリーズの狙いであり意図なのである。厳しい初任科研修を通じて培われた友情を軸にして、立場の違う警察官がそれぞれのテリトリーで、真相究明のために懸命に捜査に打ちこむ姿を描いているのだ。やがて作者のもくろみ通りに、三人の立場が交錯し、互いに影響を与えあって、予想を上回るストーリーが展開していくのだ。
(『変幻』解説より一部抜粋)