『超高速!参勤交代 リターンズ』土橋章宏

スペシャル対談 土橋章宏 × 矢島 孝(松竹プロデューサー)

累計20万部突破の大ヒット作・小説『超高速! 参勤交代』。同名映画も大ヒットを記録、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、優秀主演男優賞、優秀監督賞を受賞するという快挙を成し遂げた。作品の生みの親、作家で脚本家の土橋章宏氏とヒットの仕掛け人・矢島孝氏が、続編『リターンズ』の面白さを語りつくす!

──まず、おふたりの出会うきっかけとなった、城戸賞受賞のシナリオ「超高速! 参勤交代」のことからお聞きします。

土橋
受賞の年に東日本大震災があって、その現場を見に行ったときに、閉所恐怖症の殿様というアイディアを思いつきました。で、ざっと書いてできたのが8月で、ちょうど城戸賞があったんですよ。
矢島
8月31日が締め切りですね。
土橋
城戸賞の締め切りが8月というのは知っていましたが、タイミングがよかったですね。

──それを矢島さんがお読みになった。

矢島
東映・東宝・角川・松竹の4社で城戸賞の下読みをやっているんですけど、(私は)その年の下読みの選考委員をやってました。最初に読んだときは、わあ、すごいな、タイトルから、と(笑)。

──送られてきたときから「超高速! 参勤交代」だったのですか。

矢島
そうです。なんじゃこりゃと(笑)。タイトル倒れの作品も多いんですけど、読みだしたら厠のシーンから始まって、ふんどしがフワッと••••••すごい映像的な感じがして、面白いなと。

──最初に読んだ段階で、受賞すると思いましたか。

矢島
思いました。城戸賞応募作で、バリバリにエンターテインメントを書いてくる人は意外と少ないので、いいなと感じました。もちろんそれ以外のテイストでも素晴らしい応募作は沢山ありますけど。

──そうして公開された『超高速! 参勤交代』は、大ヒット作となりました。

矢島
勧善懲悪で、分かりやすくて、笑える作品が、最近あまりなかったのかな。それと松竹の自慢をするわけではないですけど、宣伝部が超優秀で(笑)、素晴らしい売り方をしてくれた。
土橋
お笑い時代劇って、しばらくなかったみたいです。それが久しぶりに出てきたので、観に来ていただけたのかもしれません。どの世代でも観やすいので、家族で楽しんでいただけた映画だったのかな。以前の『武士の家計簿』で、武士が戦う以外のジャンルも拓けたと思います。それで今回、参勤交代••••••誰でも知ってるけど、意外と取り上げられたことがないというのもよかったのかと。

──なかでも老中が、悪役らしい悪役でしたね。

矢島
分かりやすい悪役(笑)。
土橋
意外と、ああいう人、居ると思いますよ。トランプみたいな人とか。

──次に、2作目の『超高速!参勤交代 リターンズ』の小説と映画についてお聞きします。続編の構想は、早い段階からあったのでしょうか。

土橋
そうでもないです。映画がヒットして、一段落したとき、ツイッターとか見たら、続編を観たいという声が多かった。こんなに望まれているのなら、書いてもいいんじゃないかと。で、松竹さんからも、続編作ってもいいかな的な、お誘いがあったので、考えてみましょうかと。
矢島
いや、どうしましょうかと(笑)。
土橋
続編というのは難しいところがあって、(興行収入は)1作目の8掛け7掛け••••••。成功したのもあるけど、ちょっとリスクが高い。
矢島
土橋さんに最初に話したのは『ゴッドファーザー』のこと。PARTIIの方が名作になっていますよね。『ゴッドファーザー PARTII』を目指しましょうと、非常に抽象的なことを言った。私は何のアイディアもないんですけど(笑)。
土橋
続編というのは難しいところがあって、(興行収入は)1作目の8掛け7掛け••••••。成功したのもあるけど、ちょっとリスクが高い。
矢島
土橋さんに最初に話したのは『ゴッドファーザー』のこと。PARTIIの方が名作になっていますよね。『ゴッドファーザー PARTII』を目指しましょうと、非常に抽象的なことを言った。私は何のアイディアもないんですけど(笑)。
土橋
たしかに参勤(行き)はしてるけど、交代(帰り)はしてないのでどうでしょう、と(笑)。
矢島
ああ、それならできるかなとなって。
土橋
続編に関しては監督にも入っていただいて、いろんなアイディアを出しつつ、固めていきました。

──小説版も相談しながら進めていった。

土橋
そうです。1作目は小説が(映画のシナリオより)先行した部分があったんですけど、2作目は、ほぼ平行して進んでいましたね。
矢島
大変だったと思いますよ。小説で決まったところが、脚本で変わったり。
土橋
そうですね。シーンが変わったりとか。でも、いろんな都合があり、映画の制約があり、最終的には小説と映画が、また変わったものになった。読者の方にとっては、違うものが楽しめるので、それはそれでいいかなと思ったんです。

──続編の難しさを、もう少し具体的に教えてください。

矢島
『超高速! 参勤交代』が、ブルーリボン賞作品賞をもらったり、いろいろ評価された中で、本当に2作目を作っていいのだろうかというのが、最初の気持ちでした。監督にもそんな気持ちがあり、でもやろうかと、お互いの顔を見ながら。そんな風に手探りで進めていきました。
土橋
続編となると、〝障害のインフレ化〟がおこります。前は4日で行ったところを、2日で行かなきゃとか、ハードルが上がっていく。お客さんが観たとき、大名行列が走るという衝撃が、2回目だと減ると思うんです。そこを新たに面白く作っていくのが難しかったですね。
矢島
同じことをやってもいけないので。じゃあ、どう物語をゆさぶるか。結局、金もなし、帰る場所もなしと••••••。
土橋
新たな危機というのを考えて、それを起点にすれば楽しくなるのではないか。そこでようやく道が開けました。

──1作目よりも主人公たちを追い詰めないといけない。

土橋
追い詰めないといけないし、違う要素も入れなければいけない。危機の質を変えたり。それから2作目はキャラを重視して、より群像劇的になっている。家臣たちにも、いっぱい活躍してもらおうと。いい役者さんばかりで、それぞれファンが付いてますから、見せ場をもっと作って。『水滸伝』みたいな(笑)感じのものを書きたいなと。
矢島
この人の見せ場を、土橋さん、お願いしますって(笑)。
土橋
出た人数は、最高クラスじゃないですか。
矢島
そうですね。エンドロールタイトルが今回は長いです。
土橋
そこはトライしたところですよね。お客さんに、どう上手く見せるか、工夫しました。
IN★POCKET 6月号より抜粋
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