■他人事ではない琉球の独立
松島泰勝
なぜ琉球人が独立まで求めるようになったのでしょうか。ネットの世界で飛び交っている、琉球独立運動への偏見に満ちた空虚な言葉によっては、琉球で今起きていることは理解できません。あなたの好きな琉球だからこそ、静かに島の人の声に耳を傾けてみませんか。日本人の平和な生活を守るためにも琉球独立が必要であることが分かるはずです。
今年8月に台湾に行ってきました。桃園国際空港の運行スケジュールの電光掲示板を見ると、「琉球(沖縄)」と表示されていて、大変嬉しくなりました。かつて琉球国という独立した国がありました。最近も琉球人というアイデンティティを持つ人が増えています。1972年、琉球が沖縄県になるときに、中華民国(台湾)政府は日本政府に強く反対しました。
「沖縄は日本固有の領土」と日本政府は考えているようです。しかし琉球の現在の「県」という政治的地位は必ずしも確定したものではありません。琉球が日本の一部になったのは1879年でしかなく、しかもその時日本政府が軍事力で無理やり日本の一部にしたのです。琉球はアメリカ、フランス、オランダと修好条約を結ぶ独立国家でした。3つの修好条約原本は日本政府に奪われ、今も国の外交史料館にあります。琉球ではその返還運動が盛り上がっています。
読者の皆さんはこの本の表紙に少し驚いて手に取るかもしれません。日の丸を背景にして「日本から独立する」と訴えています。シーサー(琉球)が赤瓦にしっかりと足をすえており、琉球独立論が事実や理論をしっかり踏まえたものであることが暗示されています。琉球の独立宣言はアメリカの独立宣言を参考にして考えました。日本の
「同盟国」であるアメリカはイギリスから独立したのです。
琉球は日本から本当に独立できるのだろうか。何のために独立するのだろう。私たちにとって独立とは世界のどこかのことであり、自分とは関係がないと思っている人が多いのではないでしょうか。
日本ではこれまで大衆的な独立運動が発生したことがありません。戦後の日本の「独立」もアメリカによって準備されたものでした。そのような日本の中で琉球では本気で独立を目指す運動が活気づいています。どこから独立するのでしょうか? あなたが住んでいる日本からです。ですから琉球の独立は他人事ではないのです。琉球人は日本からの独立を宣言します。
松島泰勝
龍谷大学経済学部教授。二〇一三年に琉球民族独立総合研究学会を立ち上げ、共同代表に。『琉球独立論?琉球民族のマニフェスト』(バジリコ)他、著書多数。