講談社文庫

文科省不正調査タスクフォース(特別チーム)
水鏡瑞希の名推理!

吉田大助(書評家・ライター)

 前巻は「地震予測」や「宇宙エレベーター」「自動車の自動運転システム」など、瑞希の前に次から次へと案件が現れていく連作形式だったが、今巻は冒頭から大ネタが一発、ど真ん中に据えられている。「FOV人工血管」だ。
 メディアの第一報によれば、その人工血管は旧来のものと異なり、「合成高分子材料に培養人工血管と遺伝子導入した人工血管を混合した、まったく新しい素材が用いられた」。それにより、「たとえ人工血管が切断されても、傷口が自発的に隙間なく吻合され再生し、血流が復活する自然治癒能力を有します」。

 イギリスの高名な科学専門誌に論文掲載が決定したことを受け、殺到するメディアを前に記者会見をおこなった研究班リーダーは、弱冠25歳の美貌の大学院生・如月智美だった。「ノーベル賞ものの発明」「国民的スターの誕生」の声……。だが、論文の内容が精査されるやいなやたちまち、捏造の疑惑が持ち上がる。ツイッターで実験画像の使い回しが指摘され、国内外の研究者は「再現できない」と口を揃える。研究室のある施設は、文部科学省所管による国立開発法人化が検討されていた。瑞希を含むタスクフォースの面々は、立ち入り調査をおこなうことになる。
水鏡瑞希 根幹を成すアイデアの下敷きになっているのはもちろん、2014年1月に生物学の常識を覆す発見として発表された、小保方晴子氏による「STAP細胞」の捏造事件だ。

 もしも自分が1日でスターダムにのし上がるも一瞬ですべてが地に堕ちようとしている、若き科学者の同級生だったら? 松岡圭祐はそんな立場に、ヒロインの身を置いてみせる。他の全ての人間が「間違いだ」と言っても、自分自身が「正しい」と思う感覚を、彼女は譲らなかった。奇跡的ラストシーンまで一気に読ませる傑作だ!

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