少年に変化する能力を身につけた幼き霊獣・一角麒。天命を果たし”神獣”へと成長すべく、戦乱の中原に降り立つ。内乱の足音近づく晋の都・洛陽で、一角は天への光輝を放つ少年ベイラと知り合う。人界に囚われた霊獣と奴隷から盗賊に身を転じた若者の、戦いと友情を描く中華ファンタジー堂々開幕!
(10月29日講談社応接室にて)
※完全版は「現代ビジネス」でお読みください!
1952年熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。’77年『緑の草原に……』で第3回幻影城新人賞、’88年『銀河英雄伝説』で第19回星雲賞、2006年『ラインの虜囚』で第22回うつのみやこども賞を受賞。壮大なスケールと緻密な構成で、SFロマンから中国歴史小説まで幅広く執筆を行う。著書に『創竜伝』、『銀河英雄伝説』、『タイタニア』、『薬師寺涼子の怪奇事件簿』、『岳飛伝』、『アルスラーン戦記』の各シリーズなど多数。近著に『創竜伝15<旅立つ日まで>』などがある。
幼体時を長く地上で過ごし、成熟すると天界と人界を自在に行き来できる。
人間より遥かに長生き。
三国時代の後、匈奴・鮮卑など五つの異民族による十六の国々が林立して争った戦国時代。
中国の古代史ってどんなイメージをお持ちですか? 魏・蜀・呉の「三国志」や秦の始皇帝を描いたコミックの「キングダム」、好きな人は本当にすごく好きですよね。『霊獣紀』は魏・蜀・呉が滅んでやってきた北方民族が中国・中原を闊歩した五胡十六国時代を描いています。中国は距離的に近いとはいえどこれは二千年近い前のお話。でもそこには生死を賭して生き抜いた人間たちのリアルな姿がありました。『霊獣紀』ではその時代の武将たちと伝説の「霊獣」が、それぞれ自分の使命を感じながら、懸命に戦乱の世を生き抜きお互いを高めていく、壮絶な人間ドラマが描かれています。そしてこれは読んでいると確実にハマる! 担当編集としても、もう続編が待ち遠しいです。
(編集者T)
「霊獣紀」シリーズ刊行にあたって
篠原悠希
魏呉蜀の三国を統一した晋が三代で崩壊したのち、百年以上続いた五胡十六国時代は、中華大陸の民族大移動の時代でもあります。あまりにめまぐるしく王国が乱立、滅亡する混沌とした時代で、三国時代や隋唐に比べると日本人には馴染みが薄く物語にするのが難しいため、歴史創作的には空白の時代でもありますが、石勒や苻堅、慕容煌という、多民族国家という新しい社会を目指した英雄もいて、物語にしないのはもったいない時代でもあります。そこで戦続きの殺伐とした単調さと血生臭さをファンタジーを絡めて表現して、現代人にも共感できるキャラクターを造形し物語を紡いでみました。ともに太平の世を夢見て歩きながらも、理想主義の霊獣一角と、現実主義ともいえる異民族のベイラとの葛藤も見どころです。
PROFILE
篠原悠希(しのはら・ゆうき)
島根県松江市出身。ニュージーランド在住。神田外語学院卒業。2013年「天涯の果て 波濤の彼方をゆく翼」で第4回野生時代フロンティア文学賞を受賞。同作を改題・改稿した『天涯の楽土』で小説家デビュー。中華ファンタジー「金椛国春秋」シリーズ(全10巻)が人気を博す。著書には他に「親王殿下のパティシエール」シリーズ『マッサゲダイの戦女王』『狩猟家族』などがある。