講談社文庫

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桑原崇が歴史の裏に
隠された謎を解き明かす!
QEDシリーズ

『QED 源氏の神霊』

中村獅童さん推薦!

平安時代末期、源頼政は宮中を恐怖に陥れた妖怪・鵺を退治。武芸にも和歌にも秀で、晩年には平清盛の下で従三位に叙される。ところが二年後、恩ある清盛ら平家を敵に挙兵する。なぜ頼政が老齢を押して戦いに臨まなければならなかったのか。頼政ゆかりの地で起きた連続殺人を軸に桑原崇が源平合戦を解き明かす。

著者コメント

『QED 源氏の神霊』

 みなさんは当然、わが国の国歌『君が代』を御存知でしょう。

 しかし、二番の歌詞は? と訊かれて、きちんと答えられる方は少ないのではないかと思います。

 実は『君が代』には、三番、四番まであるという説があります。

 ただ、三、四番は変遷を繰り返しているようで確定していません。

 しかし二番の歌詞は、確定しています。それは、


  君が代は 千尋(ちひろ)の底の さゞれ石の

   鵜のいる磯と あらはるゝまで


 というものです。

 そしてこの歌は、あの「鵺退治」で有名な源氏の武将、源頼政が詠んだものとされています。彼は立派な歌人でもあったわけです。

 その頼政は、従三位という官位まで得て平穏無事に生涯を送れるはずだったにもかかわらず、七十七歳にして何もかも投げ捨てて一族共々挙兵し、平家との宇治橋での戦いに敗れ、平等院で切腹して果てます。

 しかし、最初から勝ち目の薄かった戦いなのにもかかわらず、頼政の元に大勢の人々が――武人を引退していた町人までが集い、誰もが討ち死にするまで平家に抵抗しました。

 一体「何」が彼らをそこまで駆り立てたのでしょうか。

 その本当の理由は何だったのでしょう?


 もう一人の源氏の武将は「粗野で乱暴な田舎者」と言われた木曾義仲です。

 しかし松尾芭蕉は、自分の死後「骸(から)は木曾塚に送るべし」と遺言し、現在も義仲の隣に眠っています。

 また、芥川龍之介も「木曾義仲論」において、義仲を悪く言う人間がいるが、それは「失笑」――呆れて吹き出してしまうことだ、と彼を非常に高く買っています。

 義仲の周囲では、数多くの忠臣たちに混じって、巴御前を始めとする女性たちまでが薙刀や剣を持って立ち上がりました。

 彼ら彼女たちにそこまでさせるほどの魅力を持っていた人物が、いつの間にか、単なる「田舎者」「乱暴者」と貶められるようになりました。

 しかし、そんな人物の元に、あれほど優秀で忠実な人々が集うはずもありません。

 そんな義仲に関して、歴史の闇に埋もれてしまっている真実とは、一体何だったのでしょうか?


 かの源頼朝でさえ、最初から最後まで北条氏の掌の上で踊らされていました。ですから、義経を始めとする頼朝以降の人々も当然、誰もが同じです。

 そうなるとあの時代、純粋に「源氏」として「平家」に対峙したのは「源頼政」と「木曾義仲」の二人だけだったことになります。

 今回は、そんな「生粋の源氏の人々」への供養と思って、この本を著してみました。

 お目通しいただければ光栄です。

高田崇史

プロフィール

高田崇史(たかだ・たかふみ)

昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒業。『QED 百人一首の呪』で、第9回メフィスト賞を受賞し、デビュー。歴史ミステリを精力的に書きつづけている。近著は『源平の怨霊 小余綾(こゆるぎ)俊輔の最終講義』『QED 憂曇華の時』『古事記異聞 京の怨霊、元出雲』など。

QEDシリーズ登場人物紹介
  • 桑原崇 Takashi Kuwabara

    S42(1967)2月25日生まれ。(菅原道真の命日)

    丁未。六白金星。うお座。O型。長身、色白。ボサボサの髪。長いまつげ。あだ名を「祟(タタル)」

    職業:薬剤師。

    趣味:寺社巡りと墓参り。


    H2、明邦大学薬学部薬剤学科卒業。漢方学研究室。

    4年次には「オカルト同好会」会長を務めた。

    H4、目黒区杵築の「萬治漢方」に勤める。

    実家は浅草。代々木駅徒歩6分のマンションの402号室に1人暮らし。

    スポーツは一切しない。

    尊敬する人物は、司馬遷。

    座右の銘は「手酔ヒ足酔ヒ我酔ヒニケリ」(『袋草子』)

  • 棚旗奈々 Nana Tanahata

    S43(1968)7月7日生まれ。

    戊申。五黄土星。かに座。B型。

    黒髪。ストレートのセミロング。笑うと右頬にえくぼ。

    職業:薬剤師。

    趣味:茶道(裏千家)


    H3、明邦大学薬学部薬剤学科卒業。物理化学研究室。

    卒論「エマルジョン粒子の安定性に対する、アミノ酸溶液の影響について」

    卒業後、知人の紹介で目黒区祐天寺の「ホワイト薬局」に就職。

    実家は北鎌倉。桜木町の2LDKマンションに、4歳年下の妹・沙織と同居していたが、沙織は結婚することになり、部屋を出た。

    尊敬する人物は、鈴木梅太郎(世界で初めてビタミンB1を発見した人物)。

    座右の銘は「花をのみ待つらむ人に山里の 雪間の草の春を見せばや」(藤原家隆)

    携帯の着メロは「ロンドンデリーの歌」(クライスラー)

  • 小松崎良平 Ryohei Komatsuzaki

    S41(1966)11月1日生まれ。

    丙午。七赤金星。さそり座。AB型。

    長身巨漢のため、あだ名は「熊つ崎」。

    嘘アレルギーで、ひどい嘘をつかれるとくしゃみが止まらなくなる。

    職業:フリー・ジャーナリスト

    趣味:空手。松濤館流三段。吾妻橋高校時代は、空手部副将。


    H2、明邦大学文学部社会学科卒業。

    4年次には体育会系空手部の主将を務めた。東日本大会や、全国大会も出場。

    一年時に語学を全部落として留年。そこで崇と出会う。

    実家は東日本橋。

    叔父に警視庁捜査一課・岩築竹松警部。岩築の部下・堂本素直巡査部長も知人。

    尊敬する人物は、ロバート・ケネディ。

    座右の銘は「是非に及ばず」(織田信長)

  • 外嶋一郎 Ichiro Sotojima

    S27(1952)6月6日生まれ。

    壬辰。三碧木星。ふたご座。A型。

    眼鏡をかけたモアイ像のような顔。アルコール全くダメ。分解酵素を持っていない。

    酷い花粉症。

    職業:薬剤師。

    趣味:オペラ鑑賞。冬山散策。


    S51、明邦大学薬学部薬剤学科卒業。定量分析化学研究室。

    S60、「ホワイト薬局」勤務。

    H1、同薬局店長になる。

    実家は横浜。祐天寺のマンションに1人暮らし。

    姉の駒子は、某病院勤務。遠い親戚に、相原美緒(祖父同士が兄弟)。

    尊敬する人物は、カルロス・クライバー。

    座右の銘は「遅寝、遅起き、お掃除嫌い」(おそ松くん)

QED 作品一覧

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