講談社文庫

売れっ子作家の多忙な一日密着取材!


移動 赤坂→虎ノ門byタクシー

二〇一四年六月某日。薬丸岳さんとインポケ班、文庫担当Sは某テレビ局にいた。今、もっとも旬な作家に迫るため、一日密着取材をさせていただくのだ。ご挨拶すると、薬丸さんは少々お疲れのご様子。

――七月刊の文庫『逃走』や『神の子』(光文社から八月に刊行予定)の単行本作業で、かなりお忙しかったと伺いました。
「そうなんです。仕事が続いてしまって、妻にもしばらく会ってません」
――仕事場に泊まり込みですか。
「しかも今、工事中でドリルの音がすごいんですよ。仕事にならないんで、昼間はネットカフェにいるんです」
――「ホテルで缶詰め」はよく聞きますが、ネットカフェですか!
「ホテルは昼間はチェックインできないでしょう。今日は久しぶりにネットカフェから解放されました(笑)。撮影もあるんで、髪も切ってきましたよ!」
――今日一日、よろしくお願いします!
一四時半 都内某テレビ局
ドラマ化の打ち合わせ
本日一件目は、『天使のナイフ』(講談社文庫)のドラマ化の打ち合わせだ。案内されたのは真っ白なテーブルが眩しい会議室。さすがテレビ局、オシャレだ。
プロデューサーのKさんは、もちろん薬丸作品の熱烈な愛読者。これまで様々な裁判を傍聴し、罪を犯した少年とも関わってきた。いざドラマを作ろうと考えた時に、真っ先に浮かんだのが少年法をテーマにした、『天使のナイフ』だったという。
四年前に妻を殺され、娘と暮らす男が主人公。三人の殺人犯はいずれも一三歳の少年で、少年法に守られ、罪に問われることはなかった。ところがその少年の一人が殺され、主人公は隠されていた真実と向き合うことになる。更生とは何か、どうすれば被害者は救われるのか。一〇年前に書かれたデビュー作『天使のナイフ』は、今も鋭い問いを投げかけ続けている。
「この作品だから訴えられることが、たくさんあります。原作の持つ考えさせる力をドラマにも持たせたいんです」と熱く語るKさん。ドラマはまだ脚本も演者も決まっていない状態だ。根幹から薬丸さんに関わっていただくことで、より良いものにしたい、という情熱が伝わってくる。
「この役者さんでなければ、というこだわりはありません。僕はドラマのことは分かりませんが、熱意のある役者さんなら、必ず役を演じきってくださると思っています。昨年『刑事のまなざし』がドラマ化された時も、椎名桔平さんは夏目信人そのものでした。全面的に、お任せします」
ロケや登場人物の年齢設定などについても薬丸さんは変更OKとのこと。
「映像と小説とは描き方が変わってきますから。少年事件という問題を描きつつ、人間ドラマ、ミステリーとして面白いものにしていただければと思います」
薬丸さんからも時代設定はいつにするのか伺いたい、という質問が。少年法は何度か大きな改正がされており、〇四年に書かれた『天使のナイフ』は、現状とは違う部分もある。いっぽうで、時代をずらせば、すべての設定を法と照らし合わせねばならない。Kさんもその点については検討されていたようで、「時がたって問題の重さが変わったわけではないですし、事実の積み重ねが重要な作品ですから、時代は変えずにいきたいと思います」と答えた。
最後にKさんから「執筆されるときには音楽は聴かれるんですか?」と質問が。『天使のナイフ』執筆時に聴いていた曲があれば、ドラマのイメージを固める参考にしたいという。
「『天使のナイフ』の時はマドンナの曲を聴いていました、歌詞はあまり関係なくて、曲がイメージに合うんです」
薬丸さんがタブレットで再生したのは「Live to Tell」。穏やかなイントロから、静かなマドンナの声が響く。
「僕は聴きながらではなく、音楽でイメージを膨らませたあとに書きます。英語が苦手なので歌詞の内容はちぐはぐかもしれませんが。ちなみに『闇の底』(講談社文庫)の時は、エミネムばっかり聴いていました」
エミネムのヒップホップと、性犯罪の前歴者が被害者となる連続殺人事件を描いた『闇の底』は意外な取り合わせだ。
さて、打ち合わせはここで終了。一度文庫担当Sとは別れて、虎ノ門へ向かう。
なお、気になるドラマの放映は、現時点では未定とのことだが、映像で立ち上がる薬丸ワールドも楽しみだ。

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作家とアイドル。


アイドル【idol】

(1)偶像。崇拝される人や物。
(2)心酔の対象者。人気者。
すべての作家に「アイドル」がいる。
「アイドル」はTVに出ている「歌って踊るTVスター」だけではない。
それぞれが「見守りたい」「応援したい」「その行く末を見届けたい」。
そう思えるものすべてが「アイドル」だ。
それが3次元に住むものでも、2次元に住むものでも、
2・5次元に住むものでも変わらない。
そして「アイドル」は「おっかけ」ると、
必ず「何か」を私たちに与えてくれる。
それは興奮だったり、希望だったり、創作だったりする。

続きはIN★POCKET7月号をご覧ください

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