著者コメント
写真と合わせてみれば、その猫の性格や日課、信条さえも想像できることでしょう。
年齢も毛の色もさまざまな猫たちが130匹ほど登場します。
暮らす環境に順応し、まるで矜持を持っているかのような彼ら。
猫といっしょに、あれこれツッコミを入れながら、ご覧いただければ幸甚です。
1962年愛知県生まれ。犬猫写真家。1988年よりテレビ番組制作の仕事につき、写真と映像を学ぶ。世界を旅して出会った猫や犬と人々との関係を、写真とエッセイで発表し続け、かれこれ30年。代表作として『旅猫』(講談社)をはじめ、『マルタの猫』(河出書房新社)、『ありがとう 猫が贈ることば』(辰巳出版)、『恋する猫さんぽ』(中央公論新社)など、著作多数。
うちのおねえさんが、わたしのことをすごく褒めるのです。毎日何度も、「美しい猫ちゃん」って、撫で回す。それは、うれしいことなのですが、「どうして、あなたの眉毛は白いのでちゅか?」って、いわれるのが、恥ずかしくて。バカにしているのか、って(内心)思ってしまいます。
わたしの白い眉毛は、風向風速観察になくてはならないものです。ヒゲはね、風を感じることはできますが、用途が他にありますから、眉毛でないとね。眉毛にかかる力を感じ取って、分析、データベース化しています。
わたしの家の通りには、漢方薬店が軒を連ねているの。うちは、老舗中の老舗で、町内会長もやっているのよ。漢方薬店が古くからある店か新規参入かを見分ける方法として、猫店員がいるかどうかが一つの目安になるわ。
猫店員が配属されている店舗は、確実に老舗。こんなガラスケースなどない時代から営業していた証だもの。近所のお年寄りから聞いた話だけど、昔は、薬棚が木製だったから、ネズミがね、とくに高価な薬材を狙って悪さしていたんですって。猫が不可欠だった時代からの伝統を守っているわけよ。
わたしは、こちらのお寺で生まれました。ここで暮らして、かれこれ十年。広い敷地に自然がたっぷりで、四季が感じられ、「都会のオアシス」というのは、ここのことをいうのじゃないかしらって思います。
大仏様の慈悲深いお顔に、惚れてしまったのです。遠くから拝見したとき、やさしく微笑んでくださった。思わず、お近くに身を寄せたら、掌が冷たかったのね。それでわたしは、大仏様のカイロになろうと、お手てを温めて差し上げようと、心に誓ったの。わたしの心も、暖かくなります。
きょうは、お米を量り売りしている小売店にやってきました。えぇ、わたしは、計量器が正しいかどうかを確認する検査官です。正確さに欠ける計量器を使っていると、公正な取引に支障をきたしますから。
わたしのうちは近所で魚屋を営んでいるのですが、主人であるおばあさんの口癖が、「儲からない」でした。けっこう繁盛しているのに、どうしてだろうと探ってみたところ、秤が壊れていたのです。秤を新調したら、正確に計れるようになりましたが、お客さんの数が減るという現実に苦笑いしています。