完全無罪

無罪は無実ではない。
たとえ冤罪が晴れても、真犯人が見つかるまでは……

──大門 剛明

冤罪は「正義を貫くための
つじつま合わせ」の結果なんです。

──織守きょうや

完全無罪

完全無罪

大門 剛明

最大手法律事務所期待の女性弁護士・松岡千紗に、21年前の「綾川事件」弁護の白羽の矢が立つ。千紗はその事件で監禁された少女の一人だった。あの凶悪殺人事件は冤罪なのか? 間一髪で自分を殺めたかも知れない容疑者・平山に敢然と対峙する千紗。罪を作り出す罪「冤罪」法廷の涙と慟哭の結末! 大ベストセラー『雪冤』を超える著者渾身の傑作。

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P R O F I L E

大門剛明
大門だいもん 剛明たけあき

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞した『雪冤』で2009年にデビュー、ドラマ化される。主な著書に『反撃のスイッチ』(講談社文庫)『告解者』『婚活探偵』『優しき共犯者』などがある。『テミスの求刑』『獄の棘』など映像化作品も多い。

刊行記念特別対談

──『完全無罪』の読みどころを教えてください。

大門 平山という誘拐殺人で無期懲役になった男が本当は無実なのかどうか、自分なら彼にどう接するのかを想像しながら読んでいただければと思います。それと主人公である新米弁護士の千紗が誘拐された過去を乗り越えていくところでしょうか。

──織守さんは『完全無罪』を読んだ感想はいかがでしたか?

織守 千紗も刑事の有森も、迷いながら進み、千紗とは対立しているはずの有森もまた、読者にとって共感できるキャラクターであるからこそ、物語に深みが増していると感じました。本編の3分の1くらいのところで、今井が証言をして以降の展開が読みどころだと思います。中盤以降、有森がもう1人の主人公のようになってクローズアップされ、読者は平山の無実を信じて活動するヒロインとは逆の立場から物語を見る構成も面白いです。

──『雪冤』から冤罪についてテーマを設定している動機は何ですか?

大門 冤罪は一言でくくれないほど多様で奥深い問題をはらんでいると思いますし、人の業のようなものが集約されていて強く惹かれるからです。冤罪は怖いねでは終わりません。

──織守さんは現役弁護士として、冤罪についてどう思いますか?

織守 「正義を貫くためのつじつま合わせ」が実際に行われていると、刑事弁護に携わっている弁護士は皆感じていると思います。弁護士は、百人の真犯人を逃がすことになっても、1人の冤罪被害者を出してはならないという意識で活動していますが、その一方で、「間違いなくこいつが犯人なのに、証拠がないせいで裁けないなんておかしい」と考えてしまう気持ちも理解できてしまいます。『完全無罪』が、皆が冤罪について考える機会になってくれればと思います。

──ヒロインの千紗は織守さんと同じ女性弁護士ですが、どうでしたか?

織守 尋問のシーンなどは、「そうそう、私でもそう訊くだろうな」と思うところがありました。千紗は事件の被害者でもあるので、現実の弁護士としては考え難いような行動もとるのですが、そのほかのシーンのディテールにリアリティがあるから、小説ならではのドラマティックな展開も活きてくるのだと思います。
 それから、千紗は大きな事務所に所属して、上司の応援を受けながら冤罪事件に取り組むことができているのが弁護士としてうらやましいです。通常、刑事事件、それも再審事件は、お金にならないものなので……。
 私も以前東京で働いていた頃に再審請求に携わったことがありますが、完全に手弁当でした。再審請求は先が見えず、何年もかかるのが常なので、それがこんなにスピーディーに展開するというのも、本当にうらやましい!

大門 織守さんの『黒野葉月は駕籠で眠らない』ですが法律が真実に迫る鍵になっていくのは、さすがに実務をされている弁護士さんならではだなと思いました。ただそれ以上に物語の真相に絡む人物がいずれも単純な利欲ではなく、狂気めいた強い意志をもって行動しているところに惹かれました。友人である容疑者・石田克志を信じたいという思いを持ちながら、真実を見つめなければという木村弁護士に感情移入して読みました。私は素人ですので実務経験がとてもうらやましく思えますが、実務を知るがゆえにかえって描きにくいというところもあるのでしょうか?

織守 私は読み手としては、フィクションの中の法廷や弁護士の描写に多少一般的でないところがあってもあまり気にならないのですが、自分で書く際は、リアリティを失わないように気をつけます。弁護士が書いているからには、これが正しいのだろう、と読者の方が思われそうなので……。
 たとえば、「普通刑事はこんな取り調べ方をしない」というようなシーンも、読む分には、「この刑事が特殊なのかもしれないし、背景に特殊な事情があるのかも」と解釈していちいち突っ込みませんが、自分でそういうシーンを書くときは、「この刑事の行動は一般的ではない」という説明をどこかに入れなければ、と意識しています。

──最後に法曹界とはどんなところで、本質的に守るべき物は何だと思いますか?

大門 私は勉強していかなければいけない立場ですので答えにくいですが、以前判事の方がその素質として酒が飲めることと言っておられたのが印象深いです。どんな世界でも基本は人。民事でも刑事でも人の心を大事にしてきめ細やかに対応していくことかなと思います。

織守 それは、簡単にお答えできる質問ではありません……。ですが、法律は、人を守るためのものだと思います。大門さんのおっしゃる、どんな世界でも基本は人、というのは、本当にその通りだと思います。

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織守きょうや
織守おりがみ きょうや

1980年英国ロンドン生まれ。早稲田大学大学院卒。2013年『霊感検定』で講談社BOX新人賞Powersを受賞しデビュー。2015年『記憶屋』で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞。現役弁護士として働く傍ら小説を執筆する女流作家。リーガルミステリー『黒野葉月は鳥籠で眠らない』は「このミス」ランキングで高ポイントを得て高い評価を受ける。著書には「霊感検定」シリーズ(講談社文庫)『301号室の聖者』『SHELTER/CAGE』(いずれも講談社)などがある。

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書店員さんコメント

全国の書店さんから続々と感想を頂いています!

事件の真相を暴くため、そして自分の過去と向き合うため、冤罪事件に立ち向かう千紗。消して強いわけでないけど凜として冤罪という無くすことのできない司法制度での闇の中で戦う千紗の姿は、泥臭いけれどどこか清々しく、同性の私でもとても心引かれるものがありました。

ジュンク堂松山店 藤原七都恵さん

大門さんの作品は『雪冤』『罪火』以来でしたが、それ以上の感動を味わうことができました。司法を舞台にヒューマニズムあふれる作風、後半での展開の切れ味、大門さんの小説はパワーアップしています。平山は犯罪者なのか冤罪なのか、二転三転しながら怒濤の展開をみせるストーリーの中に、人を信じ切ることの難しさが描かれ重厚な作品に仕上がっています。哀感漂うラストに胸がいっぱいになりました。

ヤマテル柴田店 渡辺啓市さん

冒頭からぐいぐい引き込まれてあっという間に読んでしまいました! 主人公の他人を信じたい気持ち、信じ切れない不安な気持ちに、わたしも一緒に心が揺れ動きました。

同志社今井出川店 安井恭子さん
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