たいへん長らくお待たせいたしました。 福井晴敏さん著『人類資金』最終巻の『人類資金7』は、2015年7月15日に刊行いたしました。
総ページ数704ページに及ぶ超大作となりました。巻頭に、既刊の詳細なあらすじも収録しております。
最終巻ラストで描かれる、『人類資金』がもたらした10年後の世界像は、暗く閉塞した時代に風穴が開いたかのような爽快感があります。詐欺師・真舟、笹倉暢人とその腹心・石優樹、そして高遠美由紀らが命がけで掴み取った未来の姿を、ぜひご一読ください。
限定版も同時刊行中です。
福井晴敏さんが『人類資金』執筆に先立って作成したプロット(あらすじ)を、完全無修正で全文収録。著者自身による、66項目に及ぶテキストコメンタリーも必読です。こちらもどうぞよろしくお願い申し上げます。
1巻
終戦の日、日銀の地下倉庫から莫大な金塊が姿を消した。戦後の混乱と日本の復興を糧に膨れ上がったその資産の名は『M資金』。七〇年の歳月が流れ、M資金詐欺を生業とする真舟雄一の前に“M”と名乗る男が現れ、とてつもない計画を持ちかける。「あなたの技術を使って『M資金』を盗み出してほしい。時価総額10兆円。報酬は現金50億、そしてあなたの恩人の死の真相」──。
2巻
謎の男“M”に盗み出してほしいと依頼された『M資金』。かつて育ての親を死に至らしめたその存在に四半世紀ものあいだ呪縛され続けてきた真舟は、“M”との接触を機に日本の地下に蠢く力学の奔流に呑み込まれていく。“M”の腹心・石優樹の尋常ならざる能力、“市ヶ谷”と呼ばれる組織の執拗な追跡。この世界を支配する“ルール”の正体を垣間見た真舟は、これまでの人生を覆し、依頼を受ける覚悟を決める。
3巻
『M資金』を管理運営する“財団”傘下のヘッジファンドは世界各国に展開している。そのうちのひとつ、 サンクトペテルブルグのファンドマネージャー鵠沼英司は損失補填のため簿外取引を繰り返し、小国の国家予算並みの赤字を抱え込んでいた。“財団”の査察が入り絶体絶命となった鵠沼は窮地から逃れるため、日露間の恐ろしい陰謀に荷担するが──。真舟の一世一代の周到な計画は、強固に守られた電子上の莫大な金『M資金』を盗み出せるのか?
4巻
思いがけずロシアで出くわしたのは、6年前から真舟を恨み執拗に追っていたヤクザ酒田だった。なぜこいつがこんなところに? 酒田の子分がその場で謎の死を遂げ、間一髪で難を逃れた真舟だったが、『M資金』を盗み出す大博打の最終局面で再び窮地に陥る。観念した真舟の前に姿を現したのは──。「あなたに見てもらいたいものがある。世界が変わる、その始まりの瞬間を」そう真舟に告げた“M”の正体は、計画の真の目的は?
5巻
資本という魔物に食い尽くされつつある世界を救うには。呪われた遺産『M資金』の継承者たる自分がなすべきことは。求道者のごとく問い続けながら世界を彷徨していた笹倉暢人は、流れ着いたアジア辺境の小国でついにその答えと出会った。M資金の守り人たる笹倉一族が、戦後70年にわたり血みどろで探し続けた答え。すべてはそれを実行するための計画だった。俺は確かに、世界を救う手助けをしたらしい──。自分がしたことの真の意味を知った真舟の前に立ちはだかるものは。
6巻
暢人は捕らえられた。それを黙って見送るしかなかった石、人生最後の猶予を与えられた本庄、帰国と同時に美由紀に拘束された真舟。絶体絶命の男たちはそれでも暢人を救うため、そして『人類資金』を未来につなげるために捨て身の戦いを挑む。巨大な敵を相手にわずか三人──暢人を、そして世界を救えるか? 前代未聞のサスペンス巨編、ついにクライマックスへ。次巻完結!
7巻
本庄が命と引き替えに手に入れた“爆弾”を託された真舟と美由紀は関西最大の広域暴力団と組み、世界の株式市場を相手に壮絶な仕手戦を仕掛ける。“市ヶ谷”から許されたわずか三週間の期限内に、なんとしても世界を騙し仰せなければならない。目的はただひとつ、暢人の命と『M資金』の未来を背負い、たった一人である場所へと向かった石の大舞台を成功に導くため――。人間への信頼を高らかに謳い上げる一大巨編、ついに完結!
限定版『人類資金7』
全7巻(しかも最終巻は704ページの厚さ!)、執筆5年に及ぶこの長大な小説を最後までお読みいただいた読者の皆様だけに、感謝をこめて限定公開! 執筆に先立って書かれたプロット(あらすじ)を完全無修正で全文収録、さらに著者による創作秘話満載のdeepなテキストコメンタリー66項目! ネタバレ注意! 『人類資金7』と2冊セット。ファン必読!
「どうせいまの生活とおさらばするなら、ひと山当てに行くのも悪くない。だろ?」
「ぼくと一緒に、世界を救ってみませんか?」
「“M”が必要としている以上、おれはあなたを守る」
「そうなゃ本当の戦争になる。みんな、おまえが始めたことなんだ。
やめる権利だって、おまえにはあるんだぞ」
「あなた、“M”がなにをしようとしてるかわかってるの?」
「これから何があっても『M資金』には関わるな。
おまえはまだ若い。いくらでもやり直しがきく」
「あいつがおれのあとを追いそうになったら、止めてやってくれ。
……私が最後に聞いた利一さんの言葉です」
「おれが知る答えはひとつ。『M資金』の“M”は……」
「自分で自分の先行きを決められない“財団”の理事長にも、
人知れぬ苦労があるとは思いませんか?」
’99年に刊行された受賞第一作『亡国のイージス』で第2回大藪春彦賞、第18回日本冒険小説協会大賞、第53回日本推理作家協会賞長篇をトリプル受賞。2003年『終戦のローレライ』で第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞をダブル受賞。’05年に原作を手がけた映画『ローレライ』『戦国自衛隊1549(原案:半村良)』『亡国のイージス』が相次いで公開され話題になる。『人類資金』ではストーリー・原作のほか脚本も共同執筆し、小説と映画の同時制作という類のないスタイルが反響を呼んだ。他の作品に『小説・震災後』(小学館文庫)、『Op.ローズダスト』(文春文庫)、『機動戦士ガンダムUC』(角川文庫)などがある。