講談社文庫

書下ろし『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』松岡圭祐

Sherlock Holmes and Hirobumi ItoSherlock Holmes and Hirobumi Ito

聖典(シリーズ)のあらゆる矛盾が解消され論証される、20世紀以来最高のホームズ物語が誕生!
  • 伊藤博文
  • シャーロック・ホームズが現実の歴史に溶けこんだ。いかに彼は目撃者のいないライヘンバッハの滝の死闘で、モリアーティ教授に対する正当防衛を立証し、社会復帰しえたのか。日本で実際に起きた大津事件の謎に挑み、伊藤博文と逢着する。最高級のサスペンスと謎ときを提供する最高のホームズ物語。

  • シャーロック・ホームズ
  • 松岡圭祐(まつおか・けいすけ)1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーになる。講談社文庫初めてのシリーズ作品『探偵の探偵』はベストセラーとなり、北川景子主演によりテレビドラマ化された。著書には他に、『千里眼』シリーズ、『万能鑑定士Q』シリーズ『水鏡推理』シリーズ(講談社文庫でシリーズ継続中)、『ミッキーマウスの憂鬱』などがある。今年末で作家デビュー20周年を迎える。

ホームズ × 歴史、最高級のサスペンスと謎解き

  • モリアーティ教授と滝に落ちるシャーロック・ホームズ(イラスト:シドニー・パジェット)
  • ◀『最後の事件』(コナン・ドイル作)でモリアーティ教授は邪魔者ホームズをライヘンバッハの滝に足留めし、命を狙う。その後、ホームズは死んだと思われた。イラスト:シドニー・パジェット

    人力車に乗る伊藤博文

    ▲日本を視察に訪れたロシア皇太子ニコライが斬り付けられた史実・大津事件に二人が挑む。

▲『最後の事件』(コナン・ドイル作)でモリアーティ教授は邪魔者ホームズをライヘンバッハの滝に足留めし、命を狙う。その後、ホームズは死んだと思われた。イラスト:シドニー・パジェット

特別エッセイ 北原尚彦(作家・ホームズ研究家)

虚実の混ぜ具合が、実に絶妙。
重厚でありながら
第一級のエンタテインメント。

シャーロック・ホームズ死す!
その恐るべきニュースは帝都ロンドンを、いや英国中を震撼させた。
ロンドンの人々は嘆き悲しみ、喪章を付けて街中を歩いたという。
だが実は、名探偵は生きていた。
彼が帰還するのは数年後。
その間、彼が何をしていたかは詳述されていない。
はっきりしているのは……アジアにいたことである

アーサー・コナン・ドイルは、自みずからの本分は歴史小説にあると考え、シャーロック・ホームズのシリーズを書き続けることに嫌気が差していた。もうやめたいと母親に相談したけれども「とんでもない」と引き止められた。そこでコナン・ドイルは、決定的な終わりを迎える物語を書いた。ホームズを悪の帝王モリアーティ教授とともに、ライヘンバッハの滝つぼへ突き落とし、殺してしまったのだ。〈ストランド・マガジン〉1893年12月号掲載の「最後の事件」である。

読者たちは悲嘆に暮れた。彼らが喪章を付けたというのも、事実として伝えられている。

それ以来、読者と編集はホームズの新作を求め続けた。コナン・ドイルはそれを拒否していたが、8年後の1901年、『バスカヴィル家の犬』の主役としてホームズを復活させる。但しこの際は、「最後の事件」以前の事件としてだった。

だが1903年、遂にホームズが本格的に帰還する。〈ストランド・マガジン〉10月号掲載の「空き家の冒険」で、ライヘンバッハの出来事の真相が語られるのだ。

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アメリカ版出版決定!

「ホームズとその東洋行に「ベーカー街の住所」のような現実味を与える氏は、世界に誇るべき才能。」

──ヤニ・メンザス(NYヴァーティカル社編集者)

名探偵の極東冒険譚、ついに世界へ進出!

若林踏(書評家)

2017年6月に講談社文庫から書下ろし作品として発表された松岡圭祐『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』が、この度アメリカで翻訳出版されることが決定した。

2017年は松岡圭祐が作家デビュー20周年を迎えた年である。同年4月に出版された歴史大作『黄砂の籠城』の二ヵ月後に刊行された本作は、「インテリジェンス戦士の悲哀が伝わる」(佐藤優氏)「史実<大津事件>に挑むホームズ。面白さ破格のミステリー」(島田荘司氏)という賛辞を持って迎えられた歴史謎解きミステリーだ。NYヴァーティカル社の編集者、ヤニ・メンザス氏に世界に誇るべき才能とまで言わしめる本作は、まさに海外に大きく羽ばたくべき傑作なのである。

ここには未だ誰も見たことのないシャーロック・ホームズの姿がある。翻訳出版は2019年度になるとのことだが、その新しさに今度は日本だけでなく、世界中の読者が驚愕する瞬間がやってくるのだ!

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