『囲碁殺人事件』竹本健治

[第1弾!]付録:短編「チェス殺人事件」

『涙香迷宮』竹本健治、伝説の「ゲーム3部作」3ヶ月連続刊行!

IQ208の天才少年囲碁棋士・牧場智久、首無し屍体の謎に挑む!

一昨年、第4の奇書”『新装版 匣の中の失楽』が復刊され、即日重版決定。続く新作『涙香迷宮』は「このミステリーがすごい! 2017年版」(宝島社)国内編第1位に輝いた。そしていよいよ伝説の「ゲーム3部作」の連続刊行が開始される。第1談は、『囲碁殺人事件』。文庫化特典:短編「チェス殺人事件」も収録!

竹本健治氏インタビュー『「ゲーム3部作」の軌跡・序』聞き手:千街晶之(ミステリ評論家) 構成/松木淳 撮影/浜村達也
  • ──
  • デビュー作『匣の中の失楽』の刊行が1978年、2作目となるゲーム3部作の1作目『囲碁殺人事件』の刊行が1980年です。この間に竹本さんは、本来なら2作目となる作品を執筆されていたと聞いています。『囲碁殺人事件』刊行までの経緯をお聞かせ願えますか。
  • 竹本
  • 『匣の中の失楽』を書き終えたときに、「幻影城」(探偵小説専門誌)の島崎(博)編集長から2作目を書きなさいといわれまして。「偶という名の惨劇」という小説を書き上げて島崎さんに渡したんだけれども「君、こりゃ使えないよ」とけんもほろろにダメ出しをいただきまして(笑)。そうしたら意気消沈する間もなく版元が潰れてしまって。そんな事情で「偶という名の惨劇」は刊行されることなく今日に至っているわけです。僕としてはホームともいうべき「幻影城」がなくなってしまい、さあ、これからどうしようかと思っていたら、のちに僕のマネジメントをやっていただくことになる磯田秀人さんが声をかけてくださったんですね。磯田さんは、当時、キティ・ミュージックからCBS・ソニー出版に出向していて、CBS・ソニー出版から2作目を出さないかと。磯田さんにしてみれば声をかけたのはいいけれど、このナマケモノの男に何を書かせればいいのかと一計を案じた(笑)。それで「君はゲームが得意だし、学生時代は囲碁研究会だったんだろ? そうだ、囲碁を題材にすればいいじゃない」「いわれてみればそうですね。書きやすいかもしれないし、やりましょう」。こんな経緯で僕の2作目は『囲碁殺人事件』になったんです。だからゲームをテーマにするというアイデアは、もともと磯田さんが提案したものなんです。
  • ──
  • 磯田さんとはどういうきっかけでお知り合いになったのですか。
  • 竹本
  • 磯田さんは奇譚社の秋山(協一郎)さんと懇意にしていて、「最近面白いと思った小説を教えて」って聞いたら、秋山さんが「こういうのが出てますよ」ってさしだしたのが刊行されたばかりの『匣の中の失楽』。磯田さんはさっそく読んで、こんな書き手がいたのかとびっくり仰天されて、「幻影城」の編集部に「竹本健治という作家に至急連絡を取りたい」って問い合わせたそうです。それでお会いすることになったんですね。
  • ──
  • 『囲碁殺人事件』では、その後数々の難事件を解決し、『このミステリーがすごい!2017年版』(宝島社)で国内編1位となった『涙香迷宮』でも変わらぬ名探偵ぶりを発揮する牧場智久が誕生します。
  • 竹本
  • 囲碁を扱うんだから、ゲームを俯瞰できる囲碁の天才少年がいたら話を組み立てやすいかなと思ったんです。執筆開始当初は、とくにモデルというものもなかったのですが、しばらくして依田紀基さんが、確か13、4歳だったと思いますが、天才棋士として登場してきて。その当時の顔が非常に凛々しくて美少年だったんです。「あ、智久だ」って自分で勝手に思い込んで(笑)。そののちは、智久は少年時代の依田棋士をイメージして執筆したということはありました。
  • ──
  • 探偵役としては他に大脳生理学者の須堂信一郎と智久の姉の典子がいます。
  • 竹本
  • 当時、左右の大脳半球における機能の違いとかが話題になり始めたころで、僕自身大脳生理学というものに興味があったんですね。それでゲーム殺人事件というテーマを与えられたときに、この最先端科学の探究者を探偵役にしたら面白い化学反応を起こすかもしれないなと考えたんです。囲碁の天才少年智久と、大脳生理学者の須堂。この異なる個性のつなぎ役として姉の典子を置きました。『虚無への供物』(中井英夫)の奈々村久生やアリョーシャを意識したのかと聞かれたことがありましたが、そうしたことはありません。
    ちなみに、須堂にはモデルがいます。僕は東洋大学の囲碁研に所属していたんですが、そこに囲碁サークルのない東京医科歯科大学からひとりの学生が出入りしていたんです。その彼の言動がひょうひょうとしていて、まんま須堂(笑)。だから風貌も含めて、そのキャラクターをモデルとして使わせていただきました。
  • ──
  • その方は大脳生理学を学ばれていたんですか。
  • 竹本
  • いや、違うと思います。ご本人は産婦人科の先生になられました(笑)。
  • ──
  • 『匣の中の失楽』はアンチミステリーの傑作でしたが、『囲碁殺人事件』は、いわばオーソドックスな本格ミステリーです。この作風の違いは、リアルタイムの読者としては大きな驚きだったと思うのですが。
  • 竹本
  • 愛読者カードを見せてもらいましたが、確かに“匣”との落差にびっくりしたという感想が多かったですね。なかには“匣”を竹森健治が書けたのは偶然だったのだとか(笑)。いまでこそゲーム3部作と呼んでいただいていますが、先ほど申し上げたとおり、最初は磯田さんから囲碁をテーマに、という単体の企画だったんです。それで『囲碁殺人事件』を出したら評判が割とよくって売れたんですね。そうしたら磯田さんが「次作もゲームの流れで行こうよ」と。『将棋殺人事件』もそこそこ売れて、どうせなら三作くらい出しましょう、と五月雨式に決まったように記憶しています。仰るとおりジャンル分けするなら本格ミステリーになるのでしょうが、そのことを受け入れてもらえたという実感もありましたので、その点はたいへんうれしく思いました。

来月へつづく! 「IN★POCKET」2017年3月号より一部抜粋

もうひとつのあとがきスペシャル ゲームシリーズの軌跡竹本健治
  • 竹本健治

  • プロフィール
    竹本健治(たけもと・けんじ)1954年兵庫県相生市生まれ。東洋大学文学部哲学科在学中にデビュー作『匣の中の失楽』を伝説の探偵小説誌「幻影城」に連載、’78年に幻影城より刊行されるや否や、「アンチミステリの傑作」とミステリファンから絶賛される。以来、ミステリ、SF、ホラーと幅広いジャンルの作品を発表。天才囲碁棋士・牧場智久が活躍するシリーズは、’80~’81年刊行のゲーム3部作(『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』)を皮切りに、『このミステリーがすごい! 2017年版 国内編』第1位に選ばれた『涙香迷宮』まで続く代表作となっている。
ゲーム3部作続刊
  1. 『囲碁殺人事件』付録短編『チェス殺人事件』
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    短編『チェス殺人事件』
  2. 『将棋殺人事件』松岡圭祐
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