村上勉インタビュー

村上 勉(むらかみ・つとむ)

1943年、兵庫県生まれ。'65年佐藤さとる作のコロボックル物語の挿絵でデビュー。コロボックルシリーズすべての挿絵を担当。挿絵、絵本、装丁など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』『きつね三吉』ほか多数。有川浩氏との初めてのコラボレート作品『絵本旅猫リポート』も刊行した。

「コロボックルを書くのは、2年前で終わりだと思っていたのに、
前言撤回です」

――有川浩さんと村上勉さんとの「コロボックル物語」がいよいよスタートしましたね。

有川さんが佐藤さとるのコロボックルを書き継ぐという話が出たのが2011年の夏でしょう。最初にその話を聞いたときは「嘘でしょう」って思ったんですよ。それはあの売れっ子の有川さんが書き継いでくれるなんてあるのか、という意味と、佐藤さとるがほかの人に書き継ぐことを許すなんてあるのか、という意味と、両方でした。佐藤さとるは頑固なんですよ(笑)。でも実際に「IN☆POCKET」での対談を読みましてね、ああ、これは佐藤さとるも本気だなと確信したわけです。実際に有川さんの本を読んで惚れ込んで、有川さんなら書けるし、書いてほしいと思って言っている。長年一緒にやってきたぼくには、よくわかりました。本当に驚きました。
実はぼくは講談社文庫で「コロボックル物語」が復刊の決まった2010年の秋に、「これでコロボックルを描くのはもう終わり」なんて言っていたわけですよね(笑)。でも有川さんからも自分が原稿を書く際には挿絵を描いてほしいと言ってもらえて、ぼくだってぼく以外はコロボックルを描けないだろうと持っているから、完全に前言撤回しました(笑)。

――有川さんがコロボックル物語を書き継ぐということが決まって、その年に「週刊文春」での『旅猫リポート』の連載が始まったわけですよね。

有川さんからコロボックルの前に『旅猫リポート』の連載の話をいただいたときは、週刊誌の連載なんて初めてだし、どうしようかと思いましたけどね。でも有川さんとの仕事ならやってみるか! と。それで、連載の最初に原稿が一気にまとめて届いたら、これが面白くてね。思わず「佐藤さとるはもういらない!」と冗談で言ったくらい面白かった。ただ、動物はいいんだけれど、「いまの男の子」を描かなければならなかったのが難しかったなあ。久々にスケッチブックを持ち歩いて電車で人を見学したりして。ワクワクしましたね。思わず若返りましたよ。
ただ、まさか連載のあとに『絵本旅猫リポート』という一冊をつくるために、ほとんど描きなおすことになるとは思わなかったけどね。楽しいけれど大変でもある作業でした。

――『絵本 旅猫リポート』にもコロボックルが登場しますね! そうしていよいよ『コロボックル絵物語』になったわけです。ここには佐藤さとる版のコロボックル物語の名シーンが、たくさんセルフリメイクされていますね。

コロボックル物語の長編を書く前に、まず短いお話から、と『コロボックル絵物語』の原稿をいただいたのは昨年の夏のことです。そのときに『だれも知らない小さな国』からの引用のくだりがト書きに書いてあって、有川さんはオリジナルのイラストを引用するつもりだなと思いました。
でもこれをぼくは新たに描きたいと思ったんです。50年前のイラストは丸ペンで描いていました。でもいつか柔らかさや温かさを出せる面相で描き直したいと思っていたんです。草原なども面相は合うんですね。だから、少しずつ変えるけれど、名場面が甦る感じで描こうと。昔のイラストを再掲載するのではなくて、いまのぼくの手で描きなおそうと。実際、有川さんがト書きで書いていた以外のイラストもたくさん描いてしまいました。小説内小説では1巻の『だれも知らない小さな国』だけが引用されていますが、シリーズを全部知っている人は3巻までの名シーンのリメイクがあることが分かってもらえると思いますよ。

――有川さんの原稿では、実際にはコロボックルがどう動くか、どこにいるかということは触れられていません。

そうなんです。有川さんの原稿は、実はコロボックルの動きが全く書かれていません。ある程度こっちにまかせてくれているわけです。絵本はこういう風に文章に余白がなければいけない。それを有川さんはわかっているんですね。だから、「オイオイオイ」と思いつつもニタッとしたりして。口で言うよりも有川さんは原稿で、ぼくは絵を描いてキャッチボールをしながら作っていきたいと思って描きました。行間にあるコロボックルの動きを、ぼくがイラストにしていったわけです。
小説の中に佐藤さとるのコロボックルが出てくるという設定にしてもらったことで、一冊の中でまさにバトンタッチができたと思います。実際、ノリコのコロボックルとサトルのコロボックルとでは、服装なども少し違います。「現代のコロボックル」になっているところをちらりと見せたいと思いました。

――長編の有川版コロボックルも楽しみです!

ぼくこそ楽しみですよ。有川さんには、これからめちゃくちゃ楽しんで欲しいですね。演劇などもやって活躍の場がどんどん広がっているけれど、挿絵はでんと構えていて崩れないから大丈夫。暴れまわって、やりたいことをやってほしいです。
ぼくももう引退かなと思っていたけれど、まだまだ描けないといけないな、とますます元気になっていますよ。

丸ペン、面相、3巻までの名シーンのリメイク

丸ペンは漫画を描くときによく用いるペン先。村上さんは原寸大で3センチのコロボックルを細かく描くために、丸ペンの先をさらに削ってイラストを描いていた。面相は面相筆で、現在は柔らかいタッチで描かれている。たとえば1巻『だれも知らない小さな国』で、コロボックルたちがせいたかさんを迎えるシーン。丸ペンのみの細かな細かな線画が強烈なインパクトを残したが、面相筆の柔らかいタッチでリメイクされたシーンも感動的! そのほかおちびさんとの出会いのシーン、マメイヌ探しのカタツムリ、ミツバチ坊やの鉛筆削り、おチャメさんの笑顔──どちらもワクワク!

(リメイク版)