もうひとつのあとがき

■公家武者信平の世界
佐々木 裕一

「公家武者 信平」シリーズは、主人公の信平と松姫との愛、人の絆をモチーフに執筆しています。初期の信平と松姫の恋物語は大きな反響をいただき、少女漫画中心の出版社でコミカライズされました。コミック化は予想もしていなかったので、お話をいただいた時は手をたたいて喜びました。本書のもう一つのモチーフは、読む時代劇です。勧善懲悪で、最後はスカッとしたい。毎回そう思いながら、物語を構成しています。なので、おぬしも悪よのう、的な悪役も出てきます。できるものなら自分が物語の中に入り込んで、この手でボコボコにしてやりたいと思うほどの奴も時々出します。

 このシリーズは、主人公だけでなく、家来や友人にもスポットを当てて書くことがあります。連作短編だからできることなのでしょうが、これが難しい。登場人物にはそれぞれ性格がありますので、思考を切り替えるのに時間がかかったりする。一日机に向かっていても、原稿用紙一枚しか書けない時がありますが、そういう時は、きっぱりあきらめて、さぼる。これは効果があると、最近分かった気がします。休息した後はすらすらと書けますし、そういう時に書いた部分は必ず面白いと言ってもらえます。上手くさぼる。これが大事なのです。

 とはいえ、締め切りもありますから、書ける時は何日も家に籠もって、知恵とアイディアを出し尽くす。枯れたらさぼる。この繰り返しで、脱稿した時はくたくたですが、本になり、売れ行き好調とか、面白いという声を聞くと完全復活するのです。次はもっと面白いものを書こう! という気力が湧いてきます。「公家武者 信平」シリーズはまだまだ続きますので、どうか完結まで、お付き合いください。

 さて、これからの展開を紹介します。

 六月は、「信平」シリーズ第三弾『比叡山の鬼』を、講談社文庫より刊行。

 七月と八月は、新シリーズの「身代わり若殿 葉月定光」を角川文庫より連続刊行。

 十月は講談社の「信平」シリーズ第四弾を。

 十一月と十二月は、双葉社より、浪人若さまの第二シーズン「新・浪人若さま新見左近」がはじまり、連続刊行されます。

 講談社、KADOKAWA、双葉社の三社による共同告知もされる予定です。

 三シリーズとも自信作ですので、お見逃しなさいませぬように。

佐々木 裕一

一九六七年広島県生まれ。本シリーズのほか、「浪人若さま新見左近」シリーズ、「若返り同心 如月源十郎」シリーズなど、痛快な時代小説を次々に発表する


「比叡山の鬼 公家武者 信平(三)」特設ページはこちら

▲ページトップへ