■漫才が載ります。
畑野 智美
文庫本の解説って、大変なんです。
まず、誰に書いていただくか、という問題があります。単行本刊行時に書評を書いてくださった方、その小説のジャンルに関係のある方、単純に「この人に書いてもらいたい」という方を編集者さんと相談して考えるんです。そして、依頼しても、受けてもらえるとは限りません。解説を書くためには、その小説を読みこまなくてはいけないから、書く方も大変です。これがシリーズともなると、大変さは二倍三倍と増していきます。
『オーディション』は、「南部芸能事務所」シリーズの四冊目になります。解説を書く場合、昨年までに出た三冊も読まなくてはいけません。「いったい、誰が書いてくれるのか?」と、頭を悩ませました。三冊目の『春の嵐』では、お笑い評論家のラリー遠田さんが書いてくださったんです。「南部芸能事務所」シリーズは芸人の話なので、これ以上の方はいないと私が希望して、お願いしました。期待以上の素晴らしい解説でした。あれよりもいいものを望むのは無理ではないか、と思いながら、考えつづけました。
そんな時、友人の宮本勇人と会いました。彼は、「コーヒーカップオーケストラ」という劇団(現在は、活動休止中)の主宰者で、脚本家です。脚本以外に、コントの台本や落語家の三遊亭好也の新作落語も書いています。劇団の公演を八年くらい前に見てから、私は彼のファンでもあります。親しいかどうか聞かれたら、「そうでもないです」と答えて笑っていられるくらい仲良くなったのは、お互いの間に尊敬があるからでしょう。いつか一緒に仕事をしたいと願いつづけていました。世間話のついでのように、「漫才って、書ける?」と聞いたところ、「書けますよ」という返事でした。
以前から、どこかに漫才を入れたいと考えていたのですが、私には書けません。「笑い」というのは、難しいのです。誰か書いてくれる人はいないかなと思っていたところ、身近にいました。タイミングを見て、編集者さんに「友人に、漫才を書いてもらいたいのです。それを解説の代わりとしましょう」とお伝えしたところ、了承いただけました。
ということで、『オーディション』の巻末には、漫才が載ります。