もうひとつのあとがき

■理想の先生とは?
浜口倫太郎

『廃校先生』が文庫化されることになりました。『廃校先生』は、廃校となる小学校の一年を描いた物語だ。この小説の主役である「仲村よし太先生」は、関西で活躍するお笑いコンビ「スマイル」の「ウーイェイよしたか」をモデルにさせてもらった。

 このウーイェイとはもう十五年以上の付き合いなのだが、彼はとにかくアホなのだ。放送作家時代、彼と行動をともにすることが多かったのだが、その度に常人では考えられない発言や行動に驚かされた。いつか彼をモデルにしたお話を書きたいと思案しているとき、ふと「こんなアホな先生がいたらどうだろうか」と閃いた。

 僕は大の学校嫌い、先生嫌いだったので、学校ものを書くなら自分が魅力的だと思うキャラクターで書きたいと考えていた。中途半端なキャラクターではだめだ。他の小説以上に面白くて魅力のある主役が必要だった。だがウーイェイならばその課題を乗り越えられるだろう。まさにこの物語に最適のキャラクターだと思った。

 こうして『廃校先生』が完成し、無事に刊行されたのだが、一番の心配は「小学校の先生がこれを読んだらどんな反応をするだろうか」ということだった。こんな先生がいるか、と激怒されるかもしれない。そんな不安を抱いていた。

 ところが教師経験のある方ほど『廃校先生』を気に入ってくださった。定年まで小学校の教師をされた方から、丁寧なお手紙まで頂戴した。

 さらにすごいことに、元リクルートのフェローで教育改革実践家、現在奈良市立一条高校の校長である藤原和博先生が『廃校先生』を読んで絶賛してくださったのだ。

 藤原先生といえば、教育界では知らぬ者のいない有名人だ。そんな方が、仲村よし太先生を気に入ってくださるとは思いもよらなかった。

 さらに「『廃校先生』を校長室で泣きながら読みました」という感想メールをいただき、めちゃくちゃ感激した。

 それが縁で、『廃校先生』の文庫版では藤原先生に解説文を書いていただいた。すでに単行本で『廃校先生』を読まれている方も、ぜひこの解説を読んで欲しい。

 そして帯のキャッチコピーも見ていただきたい。これしかない、というコピーになっています。

浜口倫太郎

2010年『アゲイン』(文庫時『もういっぺん。』に改題)でポプラ社小説大賞特別賞を受賞。他著に『シンマイ!』『22年目の告白−私が殺人犯です−』など


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