もうひとつのあとがき

■パレードは続く
小路幸也

 ご無沙汰しています。小路幸也です。

〈メフィスト賞〉出身である僕は、言ってみれば講談社さんが故郷みたいなものでして、文芸誌〈メフィスト〉はまさにホームグラウンドです。

 と、言いたいところなのですが、不肖の息子である僕はデビューして十年近く経ってからようやく〈メフィスト〉誌で初の連載をいただけたというていたらくです。

 それが『スターダストパレード』でした。

 物語の時代は1980年です。

 元暴走族のヘッドだったマモルが刑務所から出所する場面から始まります。かつて父親とも兄とも慕いながらも、ある理由から自分を刑務所に追いやった鷹原刑事の出迎えを受けたマモルは、その場でフランス人と日本人のハーフの少女ニノンと引き合わされます。どうした理由からか言葉を発せず感情も表せない幼稚園児のニノンでしたが、何故か初対面のマモルに可愛らしい笑みを見せました。

 鷹原はマモルに言います。

「この子を、守れ」

 ニノンの母親の自殺、ニノンを追う尾行者、その陰にうごめく政治家や警察やヤクザ。

 マモルは車を駆ってニノンを連れてある町に向かい、鷹原は自らの進退を懸けてニノンから母親を奪いひとりぼっちにさせた事件を追います。

 泥水の中を這うような生活の中でも失われなかった、奪われなかった、それぞれの胸に微かに残る星屑のような光だけを頼りに。

 そういう物語です。だから、タイトルの『スターダストパレード』も、そういう意味合いです。

 文庫にしていただけるということで、三年ぶりぐらいにマモルやニノン、鷹原たちに会いました。

 この本に限らず、僕の物語に出てくる彼らはその物語のために新しく生み出した人物じゃなくて、ずっと僕の中にいた人たちばかりです。僕のしたことは彼らに名前と役割を与えただけです。だから、この物語が終わった後もずっと、彼らは僕の中で〈事件の後のそれぞれの暮らし〉を続けています。

 皆さんがこの物語を楽しんでくれて、そしていつかまた、彼らのその後の物語を書ければ嬉しいなと思います。

小路幸也

1961年北海道生まれ。2003年『空を見上げる古い歌を口ずさむ』で、第29回メフィスト賞を受賞し、デビューする。「東京バンドワゴン」シリーズ他、著作多数


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