もうひとつのあとがき

■愛しき探偵たちへ
小島正樹

 奇妙な謎や不可能犯罪を探偵が解く。そういう物語が大好きで、小説、ドラマ、映画をとおして、これまでに多くの探偵と出会いました。

 その探偵たちに敬意を表し、感謝の思いを込めながら、僕なりの新しい探偵物語を模索して、2013年に書きあげたのが『硝子の探偵と消えた白バイ』(講談社ノベルス)です。

 この度の文庫化に際し、文章を徹底的に修正し、ノベルスでは明かさなかった「ひとつの過去」にも触れました。

 さて、物語なのですが──。

 袋小路に入った白バイが、ほんの一瞬で消え失せます。それから白バイはビルの屋上に出現するのですが、そのビルの階段は狭く、とても白バイでは登れません。白バイが屋上へ行くとすれば、大型のクレーン車で、外から吊りあげるしかないのです。ところがビルの近辺に、クレーン車はきていません。

 後日、その屋上で銃撃事件が起きるのですが、被弾者の立ち位置や銃創を調べた結果、たいへんなことが判明しました。

 屋上のさらに上、なにもない空中の一点。犯人は突如そこに現れて、銃を撃ち、すぐに消えたとしか思えないのです。

 銃撃事件はもうひとつあり、こちらでは銃を撃ったあと、犯人は刑事が見張るビルから、忽然と消え失せます。

 瞬間移動と消失の謎。

 警視庁の管理官に密かに請われ、一人の探偵が事件の調査を開始します。その男の名は朝倉透。「ガラスの探偵」という二つ名を持つ名探偵!

 なのですが──、あれ? 活躍するのは朝倉の助手、高杉小太郎という好青年です。

 小太郎は長い間、視力を失っていました。その間、小太郎の聴力は研ぎ澄まされ、すっかり視力を取り戻したあとも、耳のよさは健在です。

 聴力と洞察力、そして人への優しさ。それらを駆使して小太郎は、ひとつ、またひとつ謎を解きます。けれど小太郎は手柄を全部、朝倉に譲ってしまうのです。

 ガラスのように、すぐに推理が砕ける朝倉と、優秀な名助手である小太郎。

 軽く読めて面白い「探偵物語」ができました。ぜひ、お手にとってくださいませ。

小島正樹

2005年、島田荘司氏との共著による『天に還る舟』でデビュー。2015年、『扼殺のロンド』で第6回エキナカ書店大賞受賞。他に『武家屋敷の殺人』など


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